第2話ダークロード グリザリス
冒険者 E~SSSまでのランクに分けられ、過去の文明の遺跡や貴重なアーティファクトなどの発見により、功績のポイントが加算される。
大抵は祖国での活躍を認められることでS級に2か国以上が、その者の功績を讃えた事によりSS級に3か国以上の国に功績を認められ、SSSにと冒険者ランクはあがっていく、武力も必要な事はもちろんだが、武力だけではとてもSSS級冒険者にはなれない。
人類に影響を与える功績により変わってくるので、医者や錬金術師、治癒師、解呪師、魔道具師、魔術師など様々な職業にSSSのチャンスがある。
難病の治療薬の発明や、人類にはかかせない便利な魔道具の発明、魔術の大々的なる発展、新薬の作成、強力な呪いの解呪など人類に貢献した人間、後の世でも語られるべき偉人になるべき人物達は軒並みSからSSSの称号を持ち、国によっては準公爵並みの権力と施設の開放や様々で豪華な恩恵を受ける事ができる。
また犯罪者やテロリストにも災害ランクがあり、あまりにも強力な為SSSを飛び越えた災害ランクの人物もいたりするのだが、招き猫にはそんなお客様も来たりするのだ。
異世界で魔王すらも片手で組み伏せると言われている、ダークロード、グリザリス、彼もまた招き猫の常連客である。
「いらっしゃいませ~、あれグリさん久しぶりだね」
「うむ、我が迷宮はいつも通りなのだがね、整理していたらいつの間にか時間がたっていた」
グリザリスは最上位アンデットを更に超越したロードなので、人間と違い時間の概念がかなり雑なのだ。
「オムライスを頼む、コーヒーは食後に」
「かしこまりました。みんな最近グリさんこないから心配してたよ。瞬さんも美味しい日本酒手に入ったから飲ませたいっていってた」
「うむ?そうか、それは申し訳ない事をした。瞬にも後で謝らねばな」
グリザリスは思う、ここに来るとまるで人間の様に振舞ってしまう。
自分はアンデット、元は人間なのかもしれないが、人間だった頃の記憶は遥か昔になくなり、今は魔物の理の中で存在しているのだと理解している。
ダークロード、大魔王、超越せしものなんていわれている自分が、ここ招き猫だと、ただの一個の生命にでも戻ったかの様な平等な感覚を受けるのだ。
アンデットである私は眠る事がない、永遠と時間が流れていくのを感じながら存在するしかないと思っていた。
そんな時部屋にあるドアに異変を感じてみれば、誰が魔術を行使したのか?異空間系の魔術がドアに施されている。
私に恐れる者はない、アンデットだからか、死をも超越した私はには恐怖心などが欠落していたからだ、ドアを潜ると嗅いだことのないいい香りが鼻をくすぐる。
ドアの前に立って、周りを観察していると、ここのマスターである八瀬憧治がこちらに近づいてきて言うのだ。
「一名様ですか?」
私はそんな言葉に戸惑いを覚えながらも、マスターである八瀬憧治の案内を受け、席に座る。
周りの客は私がいる事になんの違和感も覚えないのか、当たり前の様に過ごす、その様が妙に心地よかった。
コーヒーを頼み、席でぼんやりと考える、私は何がしたいのか?何が目的でアンデットにまでなったのか?そしてどうして高位のダークロードまで上り詰めたのか?人間が憎いか?別段憎い相手などはいないが、傲慢で偉そうなやつは嫌いだと思った。
コーヒーを一口飲むと、うん?記憶にあるカフィよりも美味く、鮮烈な味わいを感じる。
うむ、香りと苦味と酸味の丁度いい味わい、ここに来て砂糖とミルクがある事に気が付いて、砂糖一匙とミルクを一回しいれてみると、うむ!私はこちらの方が角が取れたかのように感じ、こっちの方が味わい深いと感じた。
こんなに穏やかな感情はアンデットになってから味わった事がなかった。
魔物の体になり心も魔物になり、そうして得たのは何かに追われる焦りの感情、何か!何か!何か!何かしなくてはならない!私は何かを成さなければならない!そんな何処からくるかもわからない感情に縛られ、襲ってくる者は獣だろうと人間だろうと殺して、そして力を吸収してやった。
そんな私が、敵対するであろう人間に進められるがまま席に着き、今では穏やかな心でコーヒーを飲んでいる、ふと気になってマスターにここはなんなのか聞いてみると。
「ここは喫茶店 招き猫、あ~・・・・貴方の世界ではお茶やケーキ、軽食など楽しむ場所ですね。まぁうちは軽食と言いつつもがっつりした飯や定食もやってるんで、喫茶店と言っていいのか難しい所ではあるんですがね。お客さんの様に魔物のお客様も沢山きますよ。人間にエルフ、ドワーフにリザードマン、ゴブリンの子供達や親子で食事にくる方たちもいます。ドラゴンや聖獣などのお客様もいらっしゃいますが、うちでは争い事はなしで通してもらっていますので、よろしくお願いします」
「そんなに様々な者たちが争わずに過ごすのか、くっくっくっくっく!かかかかかかかかかかかかか!こいつは愉快だ!カカカカカカ!こんな感情は初めてだ!私は今生まれて初めてこんなにも愉快で大笑いをしている!カカカカカカカッカカ!!・・・・・世界の理を神が決めた争いのレールから外れた安寧の場所、なんとも心地よい!」
それからだった、異世界側の人間達と話、共に酒を飲み語り合い、たまにはこの店で何が一番うまいかを争いながらも楽しく過ごしたのは。
「お待ちどうさで~す!オムライスです!」
「おや、ミミ殿いたのかい?」
「うん!お客さんいないから奥で休んでたんだけど、グリさんがきたってマスターがいうからきちゃった!最近忙しかったの?みんなグリさん最近こないなぁって寂しそうにしてたよ、特に瞬さんが!グリさんと飲むいい酒手に入ったんだ~って待ち遠しそうにしてたよ」
「うむむ!皆に心配かけたな」
「でもまた来てくれて、嬉しい!」
アンデットの私を魔物の私を、魔王さえも恐れる私をここの人間は当たり前かの様に受け入れ、普通に接してくれる、それがこんなにも心地よく胸を締め付ける。
誰も恐れないどころか、当たり前の様に私を皆の輪の中にいれてくれる。
もちろん敵対する人間には容赦はしない、私を敵とみなした者には何者であろうと全力で答えている。
だが、この世界ではどんな種族であろうと、敵対などする事はなかった。
気の向くままに言い合いなどはする事はあっても、殺し合いなどに発展する事は決してない。
なんと穏やかな世界か。
実際に招き猫には強者が来店する事が多い、中には私に負けない強者ももちろん、神から強力な加護をもらっていずれは私に匹敵するであろう者達がいたりと、戦闘面でも中々楽しませてくれそうな人間や他種族の者達もかなりいるのだが、ここでは、時にはあっちの世界であって挨拶する事もあるかもしれないが、やはりここで知り合った者とは戦闘になる事はまずなく、どこか友人が増えたかの様で楽しかったりする。
運ばれてきたオムライスを口にする。
「うむうむ!やはりオムライスは招き猫のオムライスでないとな!やはり米が美味い!ソースも絶品だ!トマトは異世界の紅玉トマトか、卵は鳳の卵だな!濃厚で美味い!」
久々に味わう招き猫のオムライス、私の大好物の一つ。
いつか我が迷宮に人間が押し寄せ、歴戦の猛者が私を玉座で見つけたら、私も言うのだろうか?
ふあははははははは!我が名はグリザリス!魔王すら我が前では赤子同然!勇者よそれでも我が前に立ちふさがるか!!
なんて言葉を言う時がくるのだろうか?考えてみるとちょっと面白い。
でも今は、そんな事よりこのオムライスだ。
「マスターのオムライスはやっぱり美味いなぁ~」
今度は夜にきて、異世界の友と酒を飲もう、友が私の為に見つけてくれた酒を味わいに。
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