私立あやかし学園――教師トリニキと可愛い妖怪たち

斑猫

シーズン1:スケバン雷獣現る

第0話 プロローグ

 レイワ某年。オーサカを中心とするキンキ地方。この地では、いやこの国では妖怪と呼ばれる存在が人間たちと共存していた。

 妖怪と言うのは妖力と呼ばれる生体エネルギーを豊富に持つ生物の総称だった。総称である為に単一の種で成り立つわけではない。多くの生物種――彼らの言う所の種族が、妖怪と呼ばれる者に該当した。動物や植物から派生して進化した妖怪たちは、いつの頃からか人間に擬態する事を覚え、人間と共に暮らす事を選択したのだ。

 いずれにせよ、妖怪は人間の暮らしに大きく関与する存在となっていた。獣の機動力と人間社会の仕組みを理解するほどの知性を併せ持っているのだから。その上妖怪は基本的に長命であり、百年生きた個体ですら妖怪たちの中では若造扱いされるのが常だった。そんな彼らの影響力が大きいのは言うまでもない。


 そんな訳で、妖怪たちのいる暮らしと言うのは特段珍しいものでも何でもなかった。オフィスを覗けば人間の中に混じって様々な種族の妖怪が立ち働いている訳であるし、もちろん学校だって似たような様相を見せている。

 キンキ地方某所。セトウチ気候の温暖な一角に、その学園は鎮座していた。その名も「私立あやかし学園」である。妖怪が在籍している事を前面に押し出しているかのような文言であるが、それはやはり理事長が大妖怪だから当然の事であろう。

理事長である浜野宮灰高氏が打ち出した「規律・秩序・清廉」と言う校訓はいささか堅苦しいものであるが、灰高氏が既に九世紀もの長い年月を生き抜いた鴉天狗である事を考慮すれば、まぁ妥当であると見做すきらいもあるだろう。

 天狗らしい秩序を好む姿勢と新しいものを取り組むという二つの特質により、件のあやかし学園は地元の中高一貫校としての地位を確立していたのだ。


 そんなあやかし学園に赴任してきた若き生物教師、トリニキこと鳥塚二夫とりつかかずおこそが、この物語の主人公なのだ。

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