盟界ー世界防御ー

時雨 莎祺

立志

零 経始

2357年、5月22日、12時28分58秒。


この年、この日、この瞬間。






世界は一変した。






全てを震撼させ、世界が積み上げてきたものを一夜にして崩壊させたあの日。


突如、謎の戦争が始まった。皮切りは、世界100か国同時核投下。そして、日本本州を覆う巨大な黒いドームの出現。そして日本ひのもと大帝国だいていこく最高主導者さいこうしゅどうしゃ笹原ささはらともずなの先導の元、。2140年に起きた第三次世界大戦で既に国際社会から孤立していた日本大帝国は、再度世界の目を集めることとなった。

しかし、その頃の日本大帝国は、まるで様子が違った。世界各国へ核の雨を降らせ、徹底的に殺戮を行った。宣戦布告から20年間が経ったが、半永久的にに核を降らせ続けた。アメリカ、ソビエトが日本大帝国に降伏した後、急激に侵攻は進み、そうして日本大帝国は38年間の歳月を費やし、日本大帝国は地球を丸ごと手中に収めたのである。

しかしこの戦争、謎な点がいくつもある。

①,突如として現れたドームの謎

一夜にして日本を覆い、良くも悪くも日本大帝国を守った巨大なドーム。アメリカや中東が同じく核を使用しそのドームを攻撃したが、決して壊れることはなく、どの国もその漆黒を破ることはできなかった。

②,分断された日本大帝国臣民

  前述した通り当時日本大帝国は国際社会から孤立しており、2世紀ほど世界との交流を断たれて更に洗脳作戦によって、のである。世界に存在する国は日本大帝国だけ、世界に存在する人間は日本大帝国臣民だけ、という具合に洗脳され、そのまま下の世代へ伝えられていってしまった。

③,38年間尽きることのなかった資源

  この戦争最大の謎であり、最大の特徴。落とされた核は、10000個以上とされている。これは、ウランの埋蔵量を遥かに上回る数である。核を10000個作れるほどのウランは存在しない。だが、実際に10000個の核が落ちたと記録されている。

この戦争は、一部の間でこう呼ばれていた。





そして、それから150年、2546年。大勢の犠牲の上に成り立つ太平の時代。



新しい世代は、新しい時代を謳歌していた筈だった。突如として現れた巨大生物により、旧イタリアにして現日本大帝国の首都・伊山いざんは再び、混沌の渦中に葬られた。

混沌の渦中・伊山いざんから、物語は経始する。








「フゥー……」

山の頂上の建物に腰掛けた1人が、溜息を漏らす。どうやら少年?のようだ。下に目を遣ると、住宅の灯りがたくさんついている。空はもう漆黒に染まり、星が煌めき、瞬く。しかし少年の目は、星をも、街をも見てはいなかった。

どこか遠くを、実体のない何かを、鋭い眼でじっ…と見つめていた。








木の上に登り、寝転がっている女もまた、同じ星、街を見ていた。どちらも白く光り、凛とした瞳に映る。

カチャッ…カチッ。

彼女が持っているのは…銃だろうか。軽機関銃のような大きい銃身だ。時折それを覗いては、景色を愉しんでいる。

あくびが漏れ、瞳を閉じた。








闇夜の中を、一人の少年が走っている。

「フゥッ…フゥッ…」

息はもう白い。一つの公園で、ふと足をとめた。息を整えながら目を上に遣ると、見つめた先には幾千もの星。情熱的な瞳を更に燃やし、白い歯を見せてにかっと笑った。

そして、彼はまた走り出した。








所は変わって廃工場の中。錆びたパイプ、所々欠けた足場、折れた手すり。蛍光灯がチカチカと泣いている。フッと消えたり、灯いたりを繰り返す。その中で、一人男性がうずくまっている。その顔は怒り、恨み、憎しみ…この世の悪意を全て集めたようなぐしゃぐしゃの顔と、復讐心に燃え血走った眼球。

その眼で、何かを、睨みつけていた。












さぁ皆の者、刮目せよ!

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