モノラルと2Dの国《モノラル編》

卯月

モノラル編(2018年1月執筆)

救急車がどこから来るかわからない

 十字路で信号待ち中の車の、助手席に座っています。

 停止線から二台目の位置です。

 そのとき、救急車のサイレンが、聞こえました。

 音がどんどん大きくなるので、近づいてきているようです。

(あー、後ろから来てるな)

 と思いながら待機していたところ、


 ――の交差点を、通過して行った。



 ……というような事例が、山ほどある。


 人間や、犬や猫などの動物は、二つの耳を持っている。

 耳に音が届くまでの時間や、聞こえる音の大きさは、左右で微妙に異なる。その違いから、音源の方向を判断しているのである。

 しかし私は右耳難聴、ほぼ左耳オンリーで生活している。日常生活に支障はないが、音の方向を聞き分ける能力は極端に低い。

 従って、「サイレンが近づいてくる」ことはわかるのだが、どちらから近づいてくるかはわからない。


 ――厳密には、「こっちから来る」と思う方向は一応あるものの、ほとんどの場合において間違っている。

 長年の経験の蓄積により、私自身が、自分の聞き取った方向を信用しないことを決意した。したら危険。目視確認必須!


   ◇


 応用編。


 携帯電話が行方不明になりました。

 人に頼んで、自分の携帯電話に電話をかけてもらいます。

 着信音が聞こえるので、室内にはあるようです。


 ――「こっちで鳴ってる」と思う方向は一応あるものの(後略)。


 最近はもう開き直り、鳴らしてくれた人に、そのまま探索をお願いしている。

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