第5話

ドレッドとメモンは沈没した船ベンバウの甲板の上で兵たちとあいまみえた。

そのままベンバウを砂浜に座礁させ転覆しないようにする。

「さああんたらの出番だぜ。復活させてやってくれよ。こいつをよ」

兵たちは驚いてるが沈没した船を復活させるなんて仕事は一生にあるかないかなため我先にと作業に取り掛かった。

「あとは内戦が始まるかどうかだな」

内戦がはじまるまでにこの船を使える状態にしておこうと判断した。

大砲に関してはその道の専門家に任せれば良し。


時が来るまで俺とメモンはこの国を見て回ることにした。故郷より温暖な気候。季節は夏。湿度のないカラッとしている。

この国の大きさはメモンと共に空を飛べば一周するのに3時間程度しかない小さな国のようだ。そのため軍事基地なんてものは2つしかない。しかし今回はそれが幸いし、思想の違いで2つに分かれるのが容易だった。

一番発展していたのはこの港町で、やはり港があると発展するんだなとしみじみ感じた。

港町の東に少し行けば鉄道が通っており、貨物などもここから運ばれていくのだろうと見えた。駅周辺では人通りが多いためか、乞食や家のない人らが金銭や物をもらおうとしていた。

一時的な物だけになると知っていたが、ドレッドはその場にいた乞食全員にさっきみたパンを10個買えるくらいの金銭をあげた。

日が沈み、夜がやってきた。

メモンとどう夜を過ごすかと相談していると、メモンは宿に泊まってみるのはどうかと提案した。

宿に泊まるのは二人とも初めてだったからだろうか、なんだかワクワクした。

宿はなかなか空いており、これは国外脱出する人が少なくないためなのかとすっと頭をよぎる。

宿で一泊の申し込みと金銭を払い割り当てられた部屋に向かう。

部屋は宿と同じく木製であり、木製の家は故郷では珍しかったドレッドはまたも新しいことに触れることができた。メモンも同じようで尻尾を左右に振っている。メモンの尻尾は長いので何か物を壊さないか心配だ。

……そんなこんなで、宿に泊まったり、節約のため野宿したり、スキルで海底の魚の住処を持ち上げて魚を食糧にしたりしていたら、ついにその時が来た。

傾国防止団体がクーデターを実行しようとする一歩手前まで来たのだ。

傾国防止団体に忍び込んでいた南部基地のスパイから南部基地に寄った時そう伝えられた。

「我々の戦力では傾国防止団体に勝ち目は薄い。だがやってやろうではないか。勝敗ではなく戦ったことこそが名誉なのだ」

そう言う左胸にたくさんの勲章をつけたひげのおじさん。

ドレッドは手を挙げて発言する。

「ようやく今日、ベンバウ級装甲艦一番艦ベンバウの戦力化が成りました。ベンバウに積んである大砲だけですがね、座礁させているので動けませんが大砲は役に立ちます。搭載している41.3cm連装砲、15.2cm単装砲が10個、戦力になります」

「君につけた部下から聞いたよ……スキルなんてものが存在してたとはな、知らなかったよ。それはさておき本題はベンバウの船、いや座礁しているから要塞と言った方がいいか。砲弾はもうすでに運ばせていたよな。威嚇でどんどん撃ってくれ」

「わかりました」

と、ドレッド。


ドレッドはメモンと共にベンバウまで戻り、部下達に命令を伝えた。ここからなら北部基地を狙えるのは計算済みである。

30年前に製造され、20年前に演習中に沈没したベンバウの火砲が火を吹いた。

目標は北部基地から500メートル離れた無人の森。威嚇だ。

「!?おい!どうなっている!南のいかれ野郎どもはこんなでけえ大砲を持ってないはずだろ!?」

北部基地の人間は慌てた。

そして砲撃は続いたため両者は交渉のテーブルについた。

交渉は南部有利で進み、北部基地の将軍達は牢獄に入れられることになった。

北部と繋がっていた企業は今度は南部と繋がり利益を得ようとしたが、南部のもの達はそれを拒否し企業としてはつまらない結果となった。

こうしてこの小国での事沙汰は死人を出さずに終わった。

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