第4話 奴隷風呂

 頭の中で今、善行により5ポイントが手に入ったと機械音が流れた。温水が無制限に使えるようになったと聞こえた。


 意味はそのままなのかな?がよくわからない。俺は能力を確かめてみようと思った。ステータスオープン。


Lv.2 レン 26歳 人族

HP :50/50→60/60

MP: ∞

STR(筋力):15 →18

DFT(防御力):21 →24

INT(賢さ):32 →34

AGI(素早さ):10 →13

LUK(運):30 →33


現在、使える能力

水の排出∞

水の濾過∞

冷水∞  

温水∞ NEW!

水魔法攻撃レベル10(Max)

ポーション効果小∞


 温水∞が増えている。そして他の能力も上がっている。どういう事なんだ?


 先ほど魔物を倒したからなのか?でもあの時は確か「ことにより、レベルアップをしました」と聞こえた。


 今は、により5ポイントが手に入ったと機械音が流れた。


 もしかすると魔物を倒すとレベルが上がり、善い行いをすると能力が得られる為の、ポイントがたまる仕組みなのかもしれない。


 つまり善行を積めばチート能力が増えていくって事だな。


 良いことをした分だけ俺のチートの能力が増えていく。そしてそれは...周囲の者たちも幸せになっていく。


 Win-Winの関係だ。よし!魔物を倒しつつ、周りの者に、幸せを与えていこう。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 奴隷たちは久しぶりに沢山のご飯を食べ、水も満足に飲めた。


「美味しかった」や「温かかった」「10時間たってないのに水が飲めた」


 口々に今の環境に対し、レンが思っている以上に満足をしていた。


 そして怒鳴らずに優しく、暴力もふるわれない。


 こんなに美味しい食べ物は、村にいた時から食べたことが無い。あのブタが死んで、首が絞められた時はもう諦めた。


 ここで死ぬのかという後悔と、もう楽になれるのかという安堵が混ざった複雑な気持であった。


 それがレンに会うことにより、激変した。


 ご飯を食べ、思い思いに休憩を取っていると、ご主人様は「君たちの手足をしばっている、鎖のカギが無いか馬車を調べて来る」と言った。


「少しゆっくりしていてくれ」 


 更に、今までのご主人様、いやあのブタでは信じられない言葉。


 私たちの身体を労わってくれた。素敵...。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 さて奴隷達を休ませている間に、馬車の中に何かお宝が無いか調べてみるか。


 奴隷達の鎖を解放するカギと、奴隷達の着替えがあるといいな。


「1人で行くのは危険です。もし魔物が出てきた時には、私が餌になります。ですから私もついていきます。せっかく2人きりになれるチャンスですから...」と言ってきた。


 餌って...、余計つれて行きたくないんだけど。


 ただ押しが強く体を擦り付けて、ぐいぐいと迫ってきた。結局断れずに2人で行くこととなった。


 何か随分積極的になってきたような気がする。綺麗な女性と一緒に歩くのは嬉しい。だけどちょっと匂う。いや大分...匂う。


 こんなに綺麗なのに、年頃の女性として体を清潔に保ちたいだろうに。


 どうせあのブタのことだから、身体を拭くことも許さなかったのだろう。酷いものだ。


 先ほどの横転した馬車の所まで、戻ってきた。


 馬車の中には他の奴隷を捕まえて、着せる様な奴隷服が10着程とセクシーな服が数着あった。

 

 また、金貨や白銀貨を含めたお金、他に干し肉、胡椒、塩やワイン、後は野菜等があった。あと探していた鎖のカギも見つかった。


 これらすべてを俺のアイテムボックスの中に突っ込んでおいた。


 そして、使えそうなものが無いか馬車の中を見渡していると、違和感を覚えた。鑑定が自動的に発動して、俺に何かを伝え様としている。


 もう少し詳しく馬車の中を調べてみると、馬車の座席の下から桐の小箱に入った石鹸が2つ出てきた。こちらの世界では高級品なのであろう。


 それらを先ほどの場所まで持って帰ると、皆が俺の顔を見るなり、背筋を伸ばし正座をした。


「俺にはそんなに構えなくていい」


 そう言った後、これからの予定を話した。


「皆、この先に川があるのは知っているか?」

 

 聞くと皆がこくりと頷いた。


「大きさの岩で囲まれたくぼみがある。そこに私がお湯を入れるので、皆に入ってもらいたい。奴隷着で悪いが着替えも用意した。アリスト共和国につくまでは奴隷着で我慢をしてくれ」


 どうしても匂いが絶えられない。俺の為に風呂に入ってくれ。そして古い奴隷着は捨てよう。


「先ほどの馬車に石鹸があった。自由に使ってくれ」


 日本人の感覚で言い放った。


 しかし、ここは異世界だ。価値観が違う様でその発言をした後、その場にいた者がざわめき始め、代表してエレンが俺に話しかけてきた。


「こんな綺麗な奴隷服を頂けるなんて。今までの服で結構です。また石鹸なんて、どこぞの貴族ではないのですから、私たちにはもったいないです」


 やや呆れた様な顔で俺を叱った。


「アリスト共和国に行くのに、その恰好で入国できないと困る。言いたくはないが臭いもする。綺麗な格好で、いてくれた方が、俺も嬉しい」


 俺はエレンや他の奴隷の迫力に負けない様に頑張った。匂いに対して日本人って...敏感なんだよ。風呂に入ろうよ。石鹸使おうよ。頼むよ。


「 では、ご主人様がまずお風呂に入って下さい。私がさせて頂き、お背中やあそこを、ごにょごにょさせて頂きます」


 エレンが言ってきた。


 ごにょごにょってなに?


「おねちゃん、そんなことよりもまず、ご主人様に石鹸は高級品だから、私たちは使えないと説明しなきゃ」と突っ込みが入った。


「ちっ!」


 舌打ちしたよね、今、エレンさん...。


 エレンさん、キャラ変わっていません?


 まぁそれはさておき、汚いままの姿で悪徳奴隷商人の様に疑われるのも困るから、お風呂に入り石鹸を使って汚れを落とし、新しい奴隷着に着替えるよう命令を下した。


 では早速、くぼみにお湯を入れるか。「では皆、少し下がってくれ」と言って俺はくぼみに向かってお湯を注ぎ始めた。


 あっという間にくぼみには、たっぷりのお湯が入った。


 30分ぐらい経ってから見に行くと、そこには信じられないほど美しい女性達3人が立っていた。


 もしかしたらだが、ブタはせっかくの商品を盗賊などに取られない為に、あえて汚くしていたのかもしれない。


 けどここまで変わるものとは、驚いてしまった。俺があまりに美しさに目を奪われていると、エレンが寄ってきて


「ご主人様のおかげでこんなに綺麗になれました。ご主人様臭くないですか?」


 服の隙間から谷間が見える位置に、すり寄ってきた。


 俺が慌てて谷間を見ないように目をそらすと、「慌てちゃって可愛い♡」と小声で呟いていた。


 確信犯かい!


 この後、濾過魔法を使って残り湯を綺麗にし、さらに新しいお湯をたっぷりと入れ、男性エルフ2人もゆっくりお風呂につからせた。


 全員が美男美女であった。やはりエルフは綺麗なんだと改めて感じた。




 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 時は少し前に戻り、女性たちがお風呂に入っている時の事。


お風呂の中では、俺が知らない間に女子会が行われていた。


「お姉ちゃん、ご主人様ってすごくいい人でよかったよね。お腹一杯ご飯を食べさせてくれるし、冷たいお水も幾らでも飲んでもいいと言ってくれるし」

 

 満面の笑みでエレンに話しかける次女のカリン。


 カリンもエレンほどではないが、スレンダーな体つきで、出るところはしっかりと出ているメリハリのあるボディをしていた。更に目が大きく妖艶な美しさを醸し出す美少女であった。


「あのブタは体を拭くことも許してくれなかったのに、石鹸の使用まで許可をしてくれるなんて。貴族でもなかなか手に入らない物なのに。優しいご主人様だし...私も親しくしてみようかな。お姉ちゃんみたいに」


 からかい半分、半分は本気の眼でエレンを見つめた。


「ダメよ。本当にご主人様は可愛いんだから♡どうしてもなら協力しましょうね♡」など、和気あいあいに、お風呂に入っていた。


 さてそろそろ、アリスト共和国に向かおうと思った瞬間、頭の中であの機械音が聞こえた。


 「おめでとうございます。あなたの善行により5ポイント入手しました。これにより液体肥料無限の能力を得ることができました」


 これは今回、5人をお風呂に入れたからだろうか?


 そうだとすると善行ポイントは、善行を行った人数分、ポイントが得られるという事だ。


 つまり良い行いを多くの人に行えば、沢山の善行ポイントが得られるという事だ。


 今後、砂漠の国で沢山の人に良い行いをすれば、善行ポイントがたまり...液体の特殊能力が増えていくだろう。


 よし!さっさとアリスト共和国まですすんで、どんどん良い行いをしていこう。


「さあ皆!出発するぞ!」と、俺が奴隷たちに向かって言うと、「はいご主人様!」と元気と笑顔がこもった、返事が返ってきた。

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