第13話 三嶋梨律(リッくん)とバレンタイン12
あたしは
息が詰まる。胸が痛い。
冷たい床に膝をつくしかなかった。
「大人しくしてれば傷つけずに済んだのに、先輩が悪いんすよ」
背後にいる
しかし、すぐには動けそうにない。
頭のなかで警鐘が大きく鳴っていた。
やばいやばいやばい!!
次の瞬間、一瞬視界が白いものに覆われた。
ばふっ!
一瞬のうちに目の前のベッドの上から白い布団が消えていた。
「なんだ!?うおっ!?」
背後から
「
すぐ後ろで
あたしは胸の痛みを
「お前!?何すんだ、この
「きゃあっ!」
「
あたしは、
間一髪、
「ぐうっゔゔ重っ、
じたばたともがく
今
上手くコントロールできない。
怖い怖い怖い。
廊下を走る音が聞こえてきた。
良かった……あたしの声、届いてた……!
どんどん足音が近づいてくる。
あと少し、あと少しで助けが来る……!
目を瞑って
「大丈夫か!!
この大声は……!
ぎゅっと瞑っていた目を開くと、
「部長……!」
暴れている
「
もう大丈夫だ。
あとは俺に任せろ」
そう言って、あたしと
あたしと
「
「先輩が悪いんだ!
俺のこと、全然見てくれないから!
先輩のせいで俺は!!」
「うるさい……!
お前はそんな安い芝居で俺や
……違うよな?
俺も
頭のいいお前なら、しっかりと仕事ができるし、大丈夫だろうって思ってたんだよ……。
でも、最近のお前は、明らかに顧客への態度に問題があった。
クレームはなかったが、アンケートの顧客満足度はダントツで低かったぞ……。
どうしちまったんだ、
それは本当に、
違うよな?
お前とは違うぞ、
だから、
教えを実践しないお前に問題があるってことは明らかだ。
そして、今俺がお前を取り押さえなきゃならんのも、もちろん
お前自身の問題だ……。
残念だが、俺や
そして、俺は1人の男を、会社の代表として警察に引き渡す義務だけが残った…………非常に残念だ……」
「……俺は、俺は違う!違うんだ!……俺は!」
「お前はもう、取り返しがつかない所にいる……。
諦めろ…………
━━━━
警察には
あたしの大声を聞いてすぐに通報してくれたらしく、その後の警察の到着も早かった。
警察からは当事者として事情聴取を受けることになった。
これから本部のお偉方に状況報告があると言っていた。
あたしと
すっかり遅くなってしまい、もう誰も会社には残っていないと思う。
案の定、オフィスは電気も消えていて、誰もいなかった。
会社に着くと、ロッカーから鞄を取り出して、警備の人に鍵を締められてしまう前にビルを後にした。
一先ずは、服の件にありがとうとOKのスタンプを送り、
街灯が立ち並ぶ夜道。
最寄り駅までは同じ道だ。
「今日は
近々何かとお礼をしたいから、期待しててね」
「いえ、元はと言えば私が……」
あたしは
「ん……!?」
すこし驚いて指を唇から離してしまう。
「先輩……。
私、あのことは言わないようにしますから、ちょっとだけお話してもいいですか?」
「ふぅ……わかった。
いいよ、話してごらん」
「先輩のために用意したチョコです。
先に見られちゃったのと、中身はたぶんぐちゃぐちゃなんですけど、どうか受け取ってください」
繊細なレース編みの
「喜んで」
あたしはその箱を受け取り、レース編みに手を触れる。
「本当に素敵な
こんな綺麗なものを作ってもらえるなんて、すごく嬉しいよ」
心からの言葉と笑顔を
ほっとした事も相まって、作り笑顔ではなく、不格好な、素のままの笑顔を浮かべていたと思う。
「このチョコを、あの人から守ってくれたのも、先輩です」
「……!?」
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