ステータス上限999世界のモブに転生したけど俺だけ上限9999、魔王退治は上司に任せて楽しく生きる ~序盤で滅ぼされる村を救ったら、何故かクソ上司が破滅してんだけど~
第37話 ハジ・マリーノ村、追放されたので農地を強化する
第37話 ハジ・マリーノ村、追放されたので農地を強化する
「王都からこういう通知が来たのだが」
ヒューバートさんがそう切り出したのは、久しぶりに家族全員が揃った朝食の席での事だった。
「もぐもぐ?」
「ぱくぱく……正式なオージ王とテンガの署名入りですね」
「んぐっ……何事だ?」
「アンタたち、口の中にモノを入れたまま喋らないの」
そうは言ってもマリ姉の作る朝食は美味すぎる。
調味料の違いは偉大である。
2週間以上王都の味気ない食事を採っていたからなおさらだ。
「えー、”七の月22日付でハジ・マリーノ村をオージ王国の庇護下から外す”」
「つまり……どういうことなのジュンヤ?」
「えっとだな、ハジ・マリーノ村は……オージ王国から追放されたという事だ」
「………………ふ~ん」
「テンガがやりそうなことですね」
「へー」
「……みんな驚かないんだな?」
「まあ、今さらだな」
アルたちの薄いリアクションに、ヒューバートさんも苦笑い。
「実は……」
ヒューバートさんの話を聞くと、もともと辺境に位置するハジ・マリーノ村は王国中央から放置されていたらしい。
そのくせ農地の開墾とか防衛施設の建設には届け出が必要だったとのこと。
そういえばテンガの奴がそんな事を言ってた気がする。
「つまり……?」
「王国から除外されるという事は……自由に農地の開墾や、砦の建設が出来るようになったという事だ」
「なるほど」
王国の目を気にせず、好きにしていいという事か!
ギラリ
「ふお、ジュンヤが……マジになってる!」
「二人とも、朝飯を食い終わったら”S装備”で村の入り口に集合だ!!」
「ういっ!」
「えすそうび?」
最近は武術大会のせいで村づくりが後回しになっていたからな。
全力でやらせてもらおう。
*** ***
「ジュンヤ、アル準備万端」
1時間後、S装備に着替えた俺たちは村の入り口に集まっていた。
背後には黒光りする砦がそびえ、右手側には牧草地が広がっている。
「これが……S装備。
なんと動きやすい衣服なのでしょう」
マリ姉から手渡されたぴかぴかのS装備に袖を通したフェリシアが、興味深げに自身の格好を見ている。
初夏の日光を遮りつつも通気性の良い帽子。
上半身をぴっちりと覆い、それでいて動きやすい赤白の上着は、真ん中に付けられたファスナーで簡単に着脱可能。
同じく下半身をシッカリと覆うズボンタイプのボトムス。
防水防塵性能を追求した黒いブーツ。
……まあつまりは芋ジャージと安全靴のザ・作業着というヤツだ。
それでも可愛らしいアルと可憐なフェリシアが着るとこれはこれで魅力的だ。
「ジュンヤさんはやけに着慣れてますね」
「まあな、人手不足で現場に出ることも多かったから」
俺は企画兼営業だったのに……ご安全に!
「ねえねえ、今日は何を作るの?」
過去のブラック勤務体系はこのくらいにして、
今日のお品書きを見ていくことにしよう。
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モベ ジュンヤ
LV6 ヒューマン
HP :2,950 最大値:9,999
MP :1,430 最大値:9,999
攻撃力 :1,521 最大値:9,999
防御力 :1,211 最大値:9,999
素早さ :821 最大値:9,999
魔力 :911 最大値:9,999
運の良さ:891 最大値:9,999
☆戦闘スキル熟練度:11
☆築城スキル熟練度:16
---> 土嚢…… 使用回数30
---> 掘削…… 使用回数20
---> 深掘削……使用回数10
---> 整地…… 使用回数10
---> 防塁…… 使用回数30
---> 防塁(石)…… 使用回数10
---> 建築(木造)…… 使用回数15
---> 建築(石造)…… 使用回数10
---> 投石器(R2) …… 使用回数5
---> バリスタ(R2)…… 使用回数5
---> new ビニールハウス…… 使用回数5
---> new 野菜工場…… 使用回数1
☆戦術リンク(アルフィノーラ):7
E:ロングソード(攻撃力+10)
E:ファイバージャケット(防御力+50)
魔法:ヒール、ホノオ、コオリ、テンイ
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「ふおお」
コツコツと集合住宅などを作ってきたので、築城スキルもランクアップしている。
「今日はまず……畑の強化だ!!」
俺はびしりと築城スキル一覧を指さす。
使うのはNewマークがついた2つのスキルである。
*** ***
「はたけ? お野菜とか?」
「そうだな。
サンバーン村の人が避難してきたり、俺たちの村も人口が増えただろう?」
(こくこく)
最初は人口50人ほどだったハジ・マリーノ村。
魔王の手下にやられた村や街の住人を受け入れた結果、元の6倍……300人ほどにふくれがっている。
最近は俺とマリ姉が作る高品質の住宅や家具のうわさを聞き付け、お金を払って移住してくる人もいるくらいだ。
「なるほど、食糧生産力を強化しておこうという事ですね」
さすがフェリシアは理解が速い。
「ハジ・マリーノ村は他の村や街から遠く、輸送費もばかにならないからな」
「護衛役の冒険者の相場も上がってますからね」
そう、魔王の影響で出現するモンスターが強くなり……護衛にもよりレベルの高い冒険者が必要となる。
(なんで後半の村に行くにつれて物価が上がっていくのか不思議だったが……)
こう言う事だったのだ。
長年の疑問が解けた気分である。
「むむぅ」
アルには少し、難しい話だったようだ。
そろそろアレを建てるとしよう。
「さて、それではアルに手伝ってほしいことがある」
「……穴掘り?」
さっそくスコップを手にするアル。
「うん、それはしなくていい」
「ごめん、ちょっとボケた」
俺の築城スキルを駆使すれば、手で穴を掘る必要はない。
最近マリ姉からボケの真髄を伝授されているというアル。
恥ずかしそうに頬を染める様子がとてもかわいい。
「アルの……一番好きな料理は?」
「!? まさかのボケ倒し!?」
「いや、そうではなく。
増産する作物を決めたいんだ」
可愛くて食いしん坊なアルだが、この子は中々のグルメだ。
アルが気に入る料理なら、村人も気に入ってくれるだろうし、交易にも有利だ。
「フェリシアも聞かせてくれ」
「そうですね……」
フェリシアは何といっても元王族。
その舌は確かな信頼性を持っているだろう。
「……肉じゃが。
あれは本当においしい、暖かくてほっとする家庭の味」
「ほう」
アルの口から出てきたのは意外に地味なメニュー。
どうやら、アルがマリ姉に保護された時、一番最初に食べた思い出の味らしい。
俺も大好きだ。
余談だが、ジャガイモをこの世界に持ち込んだのはマリ姉。
転生したときになぜかカバンに種イモを入れていたらしい。
「わたくしは……ロールキャベツですかね」
「なるほど」
作るのが難しく、女子力の象徴ともいえる料理だ。
ザワークラウトのような保存食にも使えるし、うってつけだろう。
よし、作る物は決まった。
俺は築城スキルを展開する。
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---> new ビニールハウス…… 使用回数5
---> new 野菜工場…… 使用回数1
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もうお分かりかもしれないが、リバサガで農業施設を建てるときには作物を指定する。
そうすることで収量が2倍になり、貴重な現金収入になるのだ。
「築城スキル:ビニールハウス(ジャガイモ)!!」
ドドドドドドッ
「わわっ!?」
俺がスキルを発動させると、畑の隣に数棟のビニールハウスが出現する。
ビニールハウスという名前だが、支柱の間に張られているのは水晶ガラスであり透明度を変えることで温度調整が可能。
温度を一定に保つことで、1年じゅうジャガイモの栽培が可能になる。
「冬でも採れるってこと?」
「ああ、1年に4回くらい収穫できるぞ?」
「すごっ!?」
ジャガイモは栄養価も高い。
もっと人口が増えても安心だろう。
「次に……築城スキル:野菜工場(キャベツ)!!」
ズドドドドドドッ
「こ、今度は砦が!?」
その隣に、二階建ての石造りの建物が出現する。
「水を流して……」
俺は他の築城スキルを使い、水堀から水路を建物の中に導く。
「なにをされてるんです?」
「中を見てみるか?」
建物の中に入ると、水路は数十条の細い溝に別れている。
「この水に肥料を混ぜ、キャベツの苗を植えれば……」
「ええっ!?」
見る見るうちにキャベツの葉が伸びていく。
「虫に食われることもなく、大量生産が可能というわけだ」
「な、なんと……!」
キャベツは王国では高級食材であり、交易の目玉になるだろう。
「1週間ほどかけて、たくさんのビニールハウスと野菜工場を建てよう」
かくして、ハジ・マリーノ村は一大食糧生産地へと変貌していくのだった。
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