レーフェ編 第17話 魔法盾

「まぁ、わかったわ。ちょっと外に出てもいい?巻き込んじゃいそうなの」


「おう、いいぞ」


 ミシアは本気なのか荷物を置いて店の外に出る。

 俺は今一度盾を展開する。できるだけ硬く……気合いで変わるかはわからないけど。


「来い!」


「ええ。大斬!!」


 至近距離から放たれる上からただ振り落とされるだけのノーガードな一撃。これに耐えれなかったら俺は死ぬけど、こんなんで終わるならここをひよったところでこの先どうせ死ぬ。死なないためにここで死ぬ覚悟をする。

 自分が押しつぶされないように足と腕の筋肉に力を入れる。


 盾と剣がぶつかる瞬間、足が地面にブッ刺さる感覚がある。骨が軋む。早く。早くこの地獄から……そうじゃないと、押しつぶされる……!いつまで、続く、んだ!押し返そうにも押し返せない。盾が壊れる雰囲気は一切ないが、俺の体が……。


「ミシア!ミシア!!もう、無理かも!!」


「え、あ!!ごめん!ついつい……」


「はぁはぁ、でも、大丈夫そうだな。傷はついてるけど……ほら、一回戻してもう一回出したら完治だ」


 この盾を展開するのにも慣れてきた。


「じゃあ、これ買うわ」


 と、言って店に戻ろうとしたが、足が動かない。骨が折れた!?いや、でもそこまで痛くない。

 足を恐る恐るみてみると完全にブッ刺さっている。錯覚じゃなかったか。これ、抜けるの?


「ミシア、ちょ、動けん」


「ほんとだ。かわいそー」


「え、助けろよ」


「私じゃ力になれなーい」


「お前力強いし、なんか、いい魔法とかスキルとかないの?」


「あぁ、あるかも。ちょっと待ってね。相談する」


「相談?」


「ふんふん。うんうん。えー。そこをなんとか!いいの!ありがとね!いいって!行くよー。精霊の風!」


 スキル発動と同時に俺の現在地が変わり、穴の少し横にいる。


「え、このスキルって瞬間移動っていうかワープなの?」


「あっとね、私の周りにいる精霊が見える?」


「んー、見えない」


「じゃあ、わかんないか。精霊たちが対象のことを移動させてくれるんだけど、精霊が見えない人には何に何をされたかわかんなくて当然だよ。精霊を見るのにもなんかイベントが必要不可欠だし」


「ふーん。じゃあ、いっか。ありがとな」


「う、うん……」


 そういや、この盾の値段っていくらなんだろ。一万で足りるのか?

 店の中に戻ると店主が満足そうな顔をしている。

 盾が置いてあったところに戻り、値札をみてみると……一万六千。足りない。


「ミシアー?金たんないわ。一万六千だって」


「えー、ちゃんと予算以内に収めてよ?まぁコウシも気にいってるみたいだし、いいけどさ……」


「ありがとね」


「うん。じゃあさっき渡したお金とそれ一回貸して?私のと一緒に会計してくるから」


 もらったお金を一回返して盾も渡して手持ち無沙汰になった俺は店の外に出て周りを見渡していた。

 遠くには城が見えたり、近いところには武器屋や家具屋など色々な店がある。冒険者の街というよりかは商店街みたいなテンションなのかもな。

 

 見渡そうにも周りは建物ばっかりでそんなに見えないから飽きたな。地図でもみるか。

 この地図をみると周りと比べてこの国が小さいように見える。これは本当にこのサイズなのか、紙の面積が限られてるからこその表現方法なのか、正確にまだ地図が作れていないのか……。いや、でもミシアがみてたこの国の地図とやらは割と正確だろう。道に迷うことなく行きたいところに行けていた。じゃあ、地図は正確に書ける?うーん、国の観光マップとちっちゃい世界地図は難易度が違うような気がする。伊能忠敬さんは歩いて日本の地図を完成させたんだっけか。いまいちこの世界の文明レベルがわかんないな。地図がないから日本で言うなんとか時代以前か、とか決めつけるのは難しいけど。

 

「おーい、ごめんね、待たせちゃって。はい、これ」


「おう」


 俺は買ってもらった盾をもらって制服のポケットに入れる。このサイズでよかった。

 

「よし、行くか。あっちの方だってさ」


 さっき地図をみてカルミルの村とこの国を基準にしてわかった方向をミシアに教えて歩き出す。

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