第6話
「……知らない天井だ。」
一度は言ってみたいセリフ第二位を言うことができた。もう思い残すことはない…
っと、ふざけるのはよしておこう。幸い、昨晩カイやナツミ、ナツメに根掘り葉掘り聞かれた疲れは残っていない。…正直質問される側があれ程疲れるだなんて思ってなかった。まさかカイもあの二人にノってくるとは……
タクトにとって今日は異世界生活の命運が決まる日でもある。二日目にして命運が決まるとは運が良いのか悪いのか。運命は神のみが知ることだ。タクトは自分が生き残ることができるよう最善を尽くし、祈ることしかできない。
「おはよう、タクト。…それじゃあ行こうか」
「ああ。外周までの案内は頼んだ」
カイの役目はタクトが外壁を抜けるための道案内をすること。この街ラッカーダを囲む外壁は高さは20m、一般人が超えられる高さではない。しかし、この外壁を抜けるための穴が所々に存在するらしくカイはそのうちの一つに案内してくれる。
その話を聞いたときはキノマシナ達が入ってきたりしたらどうするんだ、と思ったが壁自体に対キノマシナ用の鉱物が練り込まれているらしく今までに外壁内部へ侵入してきたことは無いらしい。
鉱物影響で外壁周辺にはほとんどキノマシナがいない、そのため外壁外へと出たとしても金属や使える物のほとんどがスラム街の者によって回収済みだ。したがってタクトの向かう場所はその先。外壁がキノマシナに影響を及ばさない危険地帯。
「ここだよ。ここから入って真っすぐ歩けば璧外だ。……あとは頼んだよ、タクト」
「おうよ、俺の言ったことも忘れるなよカイ」
「……うん、わかってる」
壁に作られた大人一人がやっと通れるほどの不自然な通路。覗いてみると奥に光が見える。
「それじゃあ、行ってくる」
じめじめとした暗い空間を抜けるとあまりの眩しさに目を瞑る。朽ち果てた街の成れ果て、崩壊した街並みがタクトを出迎える。
「初めての外…か。思ったよりも酷い有様だな……」
長いことほったらかしだとこんな風になるのかと感心しながら瓦礫の上を歩く。タクトの目的地はこの先だ。こんなところで時間を食うわけにはいかない。
所々に落ちている金属を袋に詰めながら目的地へと歩く。一応キノマシナに見つからないように瓦礫を使って隠れる様に移動しているが、機械生物だというキノマシナに通用するかどうか…。この技術が発展している世界なら物質が透けて見える、なんてこともあり得る。まぁ、気休めでも意味が無いなんてことはない…はず。
「…ここら辺までくれば大丈夫か」
瓦礫の下を見てみると錆びた電化製品が覗いている。後はここから自分で運び出せそうな物を探し出すだけ。まぁ、これが一番大変なんだが……。
「よし、それじゃあ始めようか」
こうしてタクトの命運を決める命がけの金属探しが始まった。
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