第10話 別れの時
『チリン・・・・シャン!』
『チリン・・・・シャン!』
『チリン・・・・シャン!』
改札の中から、三度、鈴の音が響く。
月が西に傾いた今、逢瀬の終焉を知らせる合図である。
その音は逢瀬を果たしている皆の耳にも届いていた。
『じゃぁ・・・・また、な』
『うん・・・皆、元気に頑張るからね。心配しないでね』
『親父とお袋のこと、くれぐれも頼むぞ』
『あぁ・・・あぁ・・・、任せてよ兄さん』
『いつもお前の傍に居るからね。お父さんも「頑張れよ」って言ってたよ』
『うっぐ・・・ひっぐ・・・母さん・・・がぁぢゃん・・・』
至る所から、別れを惜しむ声が聞こえる。
しかし、いくら惜しんでも無理なのだ。
月の導きにより還りし者は、月の導きによってこそ逢瀬を果たす。
夜の
小次郎は駅舎の入り口に立ち、静かに目を瞑る。
還りし者達は皆、満足そうに笑顔を浮かべながらその後ろに並び始める。
『シャン!』
鈴の音が大きく響く。皆が並び終えたという合図を受け、小次郎は前に進む。
そして改札の手前で立ち止まり、再び剣を胸の前に立てて口を開く。
導き手たる白装束へ、深く深く頭を下げながら。
願わくば 重ねて 貴殿と 相まみえんことを
願わくば 重ねて
護り手として
月の継ぎ手として
小次郎が言葉を述べ終えると、向かい合ったままだった“黄泉の乙女”は
向きを変え、訪れた際に通って来た道程をゆっくりと戻り出す。
訪れた時と同じ様に、鈴の音を優しく響かせながら。
チリン・・・・
チリン・・・・
チリン・・・・シャン・・・
すると、小次郎の後ろに並んでいた『還りし者』達はその横を抜け、
順番に改札を通って後に続いて行った。
改札を境にして、服装は皆白装束に戻っている。
そして、最後尾の者が改札を抜ける瞬間に
----ぽん、と。
肩を、叩かれた。
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