第6話 御浄めの儀
平坂駅。
田舎の廃線駅にしては立派な駅舎、整備されている駅前。
ロータリー内の植え込みも整備されており、隣接の駐車場も奇麗に保たれている。
山間ツーリングやドライブコースとして「知る人ぞ知る」エリアのため、
駐車場の片隅には自動販売機や公衆トイレが一応設置されている。
しかし、そうだとしても違和感は拭えない。
余りにも奇麗過ぎるのだ。
そこだけ切り取れば、都会の駅前と比較しても全く見劣りはしない程に。
夕闇が迫る頃、山道を此方へ向かう多くの車があった。
皆駐車場に整然と車を停め、持参した提灯を灯し、一言も喋らずに
粛々と駅前ロータリーに集まって来た。
(今年は例年より多いな・・・・そうか、当たり年のご家庭が多いのか)
集まる人々を横目に、小次郎は篝籠に向かう。その手には何も持っていない。
『逢瀬を願い、黄泉より還り来たりし者の、束の間の安息を護りし者として、
月の継ぎ手として導きの光を願い奉る・・・・カグツチ』
篝籠に手をかざし、力強く、かつ厳かに言葉を発する。
その刹那、並べられている篝籠から一斉に火の手が上がった。
篝籠の火勢も落ち着き、時折パチパチと音を立てながら周囲を照らしている。
その傍には、それぞれに老若男女問わず数人が集まっていた。
おそらくは家族毎に集まって居るのだろう。
どの集団も、手には提灯を携えて。
小次郎は月を見上げ、先程とは打って変わって優しい声で祝詞奏上を始めた。
還りし者を迎えるための“
祝詞奏上を終えると、徐々に小次郎の身体を光が包み始めた。
まるで月光のように、優しい光。
それは、伝承において“月の如く”と称されてきた力。
長年の間、地域と共に歩んで来た力。
如月家の長子が代々身に付けるとされている力。
神代の世から脈々と受け継がれた、
・・・それこそが、如月家の正体である。
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