第77話

 地精霊の時を思い出すと……、水精霊と意思疎通を図りたいのであれば、水気の多い場所が良いのであろうか?

 ここでは、難しそうかもしれんな。

 

 「むむむ……」

 

 なんとなく水っぽい感じを意識して周囲を探ってみるが、何もつかめない。地精霊の時のように声を掛ければ通じそうな気配とでも呼ぶべき何かがここにはない。

 

 『この場所では、ちょっと難しそうです』

 

 風精霊も眉根を寄せて何かを探るような表情をしているが、同じ見解であるようだ。

 ……ふむ、どちらにしてもこんな町中で温泉を湧かせる訳にもいかんしな。それはそれで便利そうではあるが。

 

 「よし、アイラよ、行くぞ!」

 「え、次は誰のとこっすか?」

 

 いい加減にアイラも疲れてきている様子だが、問題はない。なぜなら今この行動そのものが、疲れを癒すためのものなのだから。

 ……なんとなく、吾輩自身余計に疲れているのでは?という気がしなくもないが……おそらくは気にしたら負け、というやつであろう。

 

 「誰の所でもない、町を出るぞ。聞くが、近くに泉か川はあるか?」

 「へ? お出掛けっすか。まあ討伐も済んだばかりですぐ近くなら危なくもないっすけど……。泉なら……やっぱりあそこっすかねぇ」

 「心当たりがあるのなら僥倖だ。そこにしよう」

 

 首を小さく傾げるアイラだったが、それでも先導して歩き始めてくれた。うむ、素直なことは美点だぞ、我が弟子よ。

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