第64話 真相は闇の中1
一月もすればまるで事件などなかったかのように後宮に平穏が戻った。
私もいつものように内侍省の長官室で仕事をしている。いつの間にか内侍省への出入り自由になっていた。もう、右筆係ではなく何でも屋の気分。手を動かしながら、それでも事件のあらましが気になる。事件以来、青は女官の連続変死事件のことも宴での殺害事件のことも何も言わない。
まるで始めから何もなかったかの如く――
「ねぇ、おかしくない?この事件」
「杏樹……」
「どうも出来すぎてる気がするのよね。青の同じなんじゃないの?」
「……これ以上は深入りするな。
「それって……」
青は無言で立ち上がると資料棚に向かうと黄ばんだ一冊の後宮記録を持ってきた。
「読んでみろ」
「え? これ事件に関係あるの?」
「読めば分かる」
そう言い放ち、すぐに仕事の続きをやり始めた。仕方なく渡された後宮記録に目を通していく。書かれていた内容は今から約二十年前に後宮で起こった事件だった。
【一人の宦官が失踪した。名前は
これは一体……。
最初に出てくる“帰らずの宮女事件”って……それに何だかおかしな内容になっているけど……どうみても事件性ありのものでは?
◇◇◇◇◇
「帰らずの宮女事件」
注:後宮から消えてそのまま帰ってこない
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