第49話 新しい妃1
「貴女が……巽才人ね」
現れたのは新しく後宮に入った
流石は、郭貴妃の姪御。大変な美少女だと感心してしまう。
「皇帝陛下から寵愛されている事をいいことに権力を振りかざしているようね!御存知?貴女のような人のことを世間では『身の程知らず』っていうのよ!」
いきなり現れて何を言い出すかと思えば……私に喧嘩を売りに来たようだわ。それにしても、身の程知らずって……私は思わず笑ってしまった。
「な、なに!?」
郭婕妤の顔がみるみる赤く染まっていく。怒りのあまり口元を震わせているみたいだわ。でもね、これが笑わずにはいられないでしょう。
「御存知だと思いますが、私は巽家の娘、私に『身の程知らず』と言えるのは皇族、または同じ八州公の本家の者だけです。そのどちらでもない郭婕妤がその言葉を発するのは間違っていると思いますよ?」
これは嫌味でもなんでもない、事実。
まぁ、皇族でも上位以外は下手をすると八州公の方が立場が上の場合もある。幾ら皇后を輩出してきた郭家とはいえ、八州公には遠く及ばない。
「うるさいわねっ!身分をひけらかす気!?そうやって自分は高貴な生まれなのだと言いたいのかしら!!」
はぁ……呆れた。こんなにも頭が弱いなんて。そういう次元の話ではないの言う事を理解して欲しいわ。郭家で教育を受けなかったのかしら? それとも勉強を真面目にしなかったか、ね。後宮に入る際の決まり事もこの様子では全く頭に入っていないんじゃないかしら。如何に貴妃の後ろ盾があったとしても、これでは後宮で生き抜くことはできないわ。私はそんな彼女に憐れみの目を向ける。それに気づいた郭婕妤は腹を立てたのか、般若の如き形相で睨みつけてきた。
「何よ!失礼じゃない!!貴女みたいな人が、陛下の寵妃でいる資格はないわ!!大きな顔をしていられるのも今の内よ!!!」
そう捨て台詞を吐いて郭婕妤は去って行った。
「何だったのかしら?」
まるで嵐のようにやって来た郭婕妤の姿を見送った私は小さく溜息をつくと踵を返した。
「まったく……あんな娘が後宮にきたと思うと頭が痛いわ。先が思いやられる……」
さっきまで感じていた呆れは消え、代わりにドッと疲れを感じた。全く面倒臭いことになったものだわ。
この時の私は知る由もなかったのだ。
この後、とんでもない事態が起こるということを―――……
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