第40話 魔王は意外と忙しい

 その晩俺は、まことに確認して、あきれられながら一緒に寝た。

 翌朝、ゆっくり優しくしたつもりだったのだが、破瓜の痛みがあるらしくベッドへ朝食を運ぶ。

「やっぱりこういうのが幸せ。周りにわさわさ人がいるのは駄目ね」

 ぶつぶつ言いながら、何か納得しているようだ。


 人をちらと見てうふふ。

 またちらっと見て、うふふとほほ笑む。


「変な奴だな?」

「幸せを噛み締めているんです。やっとですよ。ほんとに何年待ったと思うんですか?」

「知り合って、まだ1月くらいじゃないか?」

「気持ちの問題です」

 そう言いながら口を開ける。


 口にスプーンを突っ込みながら、

「食うのは大丈夫だろ?」

 そう聞くと。

 ガーンという顔をして。

「真司さんが釣った魚に餌を上げないタイプだとは」

 そう言って泣きまねをする。


「今しないと、すぐに寄生虫組が帰って来るんですから。ちょっと痛いけど、ご飯を食べたらいちゃつきましょう」

 そう言ってふんすと気合を入れ、また口を開ける。


 ああ。まあそうか、2人で始まった生活だが、すぐに人間が増えたもんなあ。

 そんな事を言っていたが、その後、音を上げたのはまことの方だった。

「だっ駄目です。もう無理。意識が飛んじゃう。シャジャラさんでもフィオリーナでも良いです。退院して、助けて。何も知らず生意気なことを言いました。ごめんなさい。反省します」

 半分泣きながら訴えて来る。

「まだ昼だぞ。若いから、明日までするんじゃなかったのか?」

「いじめっ子ぉ」

 すぐに、白目をむいてかくかくし始めたから、そっと寝かせた。


 しかし自分で言うのも何だが、完全に化け物だな。

 ふと、前からこうなら浮気もなかったのではそう思ったが、あれは俺がどうこうじゃなかったなと思いなおす。


 起き上がり、鏡の前でポーズをとる。ニマニマしながら、以前より引き締まった体を少し眺める。


 その後、昼になってまことのお母さんがやって来た。

 一人でご飯を食べるのが寂しいらしい。

 俺はそれを聞いて、親子だなあと感心する。


 適当にパスタを作り、軽く食べる。

 その間に、まことの事を聞かれたが、寝ていますとしか答えられなかった。

 まあそれだけで理解したようだが。

 すごくニマニマされた。


 翌日には、寄生虫組プラス、カリストも帰って来た。

 まあ基本的に、カリストは水銀が残っていないか確認とこっち側の人間との違いがないかを見てもらった。

 その時に、興味を持った医者が、無料で良いからと言って、全員健康診断もしたはずだ。

 特に、シャジャラは角が生えているため、念入りに検査をされたようだ。


「主様の病院と呼ばれる所。検査と言っておりましたが、あれだけ色々しないとだめでは、病人はもっと具合が悪くなりそうですわ」

「あれは健康診断と言うのをお願いをしたんだ。皆が健康かどうかを判断するためにな」

「主様がそうおっしゃるから我慢をしたのですが、おしりにも変な管を入れられてしまいました。もうお嫁にいけません」

「ああっ? 私なんかもっとひどかったぞ、おしりもだが前の子作りもがもがもが」

 変なことを言い出したので、シャジャラの口をふさいだらじっとり見られた。



「先生、どうでしたか?」

「ああキミか。シウダー王国の人は普通の人間だな。それで魔族のシャジャラさん。角は皮膚だな。サイとかと同じだが、下の骨を貫通してファイバーが脳へとつながっている。魔法を使うと言っていたし、何か感覚器官の可能性はある。触ると擽ったい(くすぐったい)と言っていたしな」

「興味深いですね。サンプルは取りました?」

「いや取れなかった。メス程度では削れなかったよ。下手に削って根元のファイバーが神経束だと痛みがな。CTはどうだった?」

「ほぼ構造は人間です。ただ彼女の場合はですけどね。話を聞くと尻尾がある方もいるようでパワータイプはその傾向があるようです。お願いして、魔族の方たち健康診断を受けてくれませんかね」

「そうだな聞いてみるか。ああ私の方にDICOMのデータは送っておいてくれ」


 ”DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine ダイコム)は、CTやMRI、CRの医用画像フォーマット。医用画像の共通規格”

 最近は、骨折とかの場合、ケガした部位を3Dプリントして、ムンテラとかインフォームド・コンセントの時に使うようです。



 まあみんな無事に帰ってきて、次の日から王の書面をもって自分の国となったところへ魔王国への統一の旨。布告を行いに行った。


 ペルディーダ伯爵領はまだしも、なぜかパトリツィオ伯爵領の方が歓迎された。

 領民に話を聞くと、食うものは皆取られてあと一週間もすれば餓死寸前だったようだ。


 貴金属類を量産して、シウダー王国と日本から買い付けを行い配給をした。

「うーむ空輸は高い。こっちも一本道を造ろう」

 標高差を考えず魔王城から一本線を引く。

 ダメだな、町から遠すぎる。

 それに日本の土地もある。

 大体こんな距離ずっとまっすぐだと、車運転していても寝てしまう自信があるぞ。


 そんなこんなでもめていると、日本側から川の水が流れ込むため、元太平洋の水があふれそうだから工事していいかと打診があった。

 川も行き場が無いと下流域で水位が上がり土地が沈んでしまう。

 その為早急に工事を行い、結構立派な運河を作るらしい。

 その土地が、うちの土地だとなにも建っていないからやりやすいとの事。

 じゃあ、それの使用料を含めて道路を造ってとお願いした。


 ちなみに、運河は基本の形は決めてもらい、魔族の中で土魔法が使える連中に俺が命令を出した。一回の魔法で、数百メートルが10m以上陥没する。

 面白そうなので、やり方を習い試すと100m以上の谷が数キロできた。

 それを見たシャジャラが、そっと後ろからやってきて俺に抱きつく。

「真司様あなた様のお力。皆十分に存じています。ですので、作業は下々の者に任せていただきたいと思います」

 そう言って耳元で囁く。


「シャジャラさん。真司さんを甘やかしては駄目。手を出さないでください」

 まことに責められ、ほかの皆からも、そろって手を出すなと叱られた。

 土はどこへ行ったのかと思ったら、谷底や壁面が石になっていた。

 日本の関係者からは、力加減ができればよかったのに。惜しいと一応ほめてもらった。

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