第37話
あのあと母は部屋へと引きこもり桜は母の後を追いかけた。
「なにかあったら大声で叫べよ?」
「私最強なんで!待っててください!」
そういう桜の背中は逞しかった。俺は引き続き父さんの看病をする。
「なぁ、父さん」
「ん?」
「なんで父さんは母さんと結婚したんだよ?父さんのことヤケクソに言うやつだよ?」
「母さんは不器用なんだよ……まぁそんなとこに惹かれたんだけどな……
好きになったほうが負けってやつだよ」
桜side
「しつこいわね!とっと出ていったらどう?もう認めるから!」
「そういうことじゃないです!いくら認めてもらっても身の回りにいる人を大切に幸せにしないと私は認めてもらっても意味がありません!」
「いい加減にしてちょうだい!」
とお義母さんは私に本を投げてきてそれがちょうど私の顔に当たり私の目には痣ができた。
「ふん!あなたがそこにいるからよ!本当に目障り!」
「……」
「彩葉さんのときもそうだった!みんな智や拓海さんに優しいの!私なんかに……優しくしてくれる人なんかいないの!」
「……」
「あなたが幸せなのムカつくの!」
「……」
「黙ってないでなにか言ったら!?これだから最近の若い娘は……」
「……」
「あなた口はないの!?」
「……いい加減気づいてください」
「なによ!?偉そうに」
「悪口は人が受け取らないと相手を傷つけることはできません。だから私は受け取らないで黙って流していた。今お義母さんは1人でヒステリックになってるだけです。」
「うるさいわね!」
私はお義母さんにゆっくり近づきギュッと抱きしめた。そして背中をさすり
「あなたは1人じゃない。お義父さんだって、智さんだって、李理香さんだっている。それにあなたが辛かったことも愛されたかったことも知っています。」
「……」
「だからそんな悲しいこと言わないでください。」
「ご……ごめんなさい……」
そう言うとお義母さんの目から涙が溢れていた。
「私と拓海さんが出会ったのは病院だった」
「……!」
お義母さんは落ち着くとお義父さんの話をし始めた。
「拓海さんはね、戦争中に産まれて病気もあって、家族もいたけどお義母さんが病気になって毎日お見舞いに来ててたまたま拓海さんのお義母さんと隣の病室で、そこで出会ったの。」
淡々と話すお義母さんにはとても優しい笑顔が溢れていた。
「だけどお義母さんが亡くなってからも毎日病室に来て私の元へ来てね?「結婚を前提に付き合ってくださいって」言われたの。まぁびっくりよ?」
智side
「俺は母さんが病気のときたまたま隣の病室にいた康子と出会ったんだ。俺は康子に一目惚れしたんだ。病気に向き合う姿がかっこいいし、なによりあの人は家族との縁を切ろうとするまでの覚悟で俺と居ることを決めてくれたんだ。俺も康子も病気持ち。だけど二人にしか分からないことだってあるだろう?だから俺たちは結婚して康子はリスクを背負ってまでお前たち二人を産んだんだ。」
「母さん……」
「あいつ誤解されやすいからな……だけどお前たちのために色々と工夫してくれているんだ。わかってやってくれ。人を変えることはできないけど自分は変われるからな」
と父さんはニコッと笑った。
「懐かしいなぁ、結婚したときのこと。」
「父さんは今ああいう風に変わってしまった母さんのことを今でも好きなの?」
「もちろんだ。変わったというより人生は長くて良くも悪くも人を変えてしまうからなぁ。俺は多くのことを母さんから学んだよ。」
「父さん……」
「だから智。桜さんと一緒にいるっていうのはそういうことだ。幸せも怒りも悲しみも半分にして分かち合う。それが夫婦なんだよ」
扉が開く音がし、そちらを見ると母さんと桜がいて母さんは父さんにギュッと抱きつき
「今までごめんね……」
「く……苦しいから離しておくれ……!」
俺たち二人はお互いに笑い合い正式的に俺の家族に認めてもらえた。
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