第68話

「ここは?」


「やっと起きたのですねリック」


「イーライも一緒だったか……まて、なんで私が縛られているんだ」


「なんでってこれからおrネオ攻撃をたっぷり受けてもらうからに決まってるだろ」


「……こんな一方的な攻撃は卑怯じゃないか?」


「そうか、でもお前たちも魔術神様に同じことをしていたじゃないか」


「私たちは提案をしに行っただけだ! 決して内戦を起こそうとしていったわけではない」


「魔術神様に盾をつく行為は内戦を起こすのと同義である。そんな連中を生かしておくわけにはいかない!」


「…………」


「ようやく諦めてくれましたか。それでは行きますよ中級魔術ライトニングアタック」


 自分の周りに光の魔法陣がたくさんできている。

 一階も攻撃せずに負けるなんて……マーシャのことをもっとそばで見守っていてあげたあった。それに彼女ともっとお話ししたかった。

 あの子との思い出が走馬灯のようによみがえる。


「それじゃあさようならリック」


「やだ、まだ生きていたい」


 心の中でそうつぶやくと、マーシャの声が聞こえてきたような気がした。


「ちょっとだけ力を貸すね」


 体中から力がみなぎってくるようなこの感覚、そしてマーシャに抱きしめられているような温かさ。

 ……これはいったい何なんだ?


「プランは完璧だったはずなのになんで抜け出されたんだ?」


 体を左右に動かしていると、いつの間にか縄がほどけていた。

 マーシャの力がある今なのであればこいつにも勝てるような気がする。


「それじゃあ行くよ。中級魔術ダークカッター、イーライのことを切り刻みなさい」


「中級魔術ごときで私に攻撃が当たるとでも思っているのか。上級魔術神の加護、私のことを魔術神様の加護でお守りください!」


 厄介な魔術を使われてしまった。

 神の加護はシールドと回復の合わさった上級魔術、中級魔術二つを使って攻撃しようと思っていたけれどもそれは難しいか……?


「あきらめないでリック、今のあなたならどんな相手にも勝てるはずだよ! 私を信じて」


 不安になっているとマーシャの声が聞こえてきたような気がした。

 私の作り出した妄想か、それとも本当に話しかけてくれているのかはわからない。

 彼女の笑顔をもう一度見たい、そのためにはここであきらめていてはだめだよな。


「中級魔術ダークキル、イーライのことを粉々にしなさい! そして上級魔術ダークミサイル、発射!」


 今の自分が使える最大の技を使った。

 これで相手のことを封じ込めれるはず……!


「ふん、所詮リックの魔術だ。魔術神様の加護のある私にそんな攻撃が通用するわけないじゃないか」


 イーライは魔術神のことをかなり信頼しているようだ。

 その忠誠心は素晴らしいのだけれども、マーシャのような悲劇を生みだしたことを忘れてはいけない。


 グアァァァァァ

 バリバリバリバリ……



 イーライの自信はすごいものだった。

 ただ私の攻撃にはそんな小さいことは関係なかったようだ。

 彼の体は私のはなった魔術でどんどんと砕けて行った。

 思わず目をそらしてしまったが、その間も彼の叫び声は止まらなかった。


「……案外最後の時はあっけないものだな」


 もうちょっと抵抗されるかと思っていたので拍子抜けだ。

 これは正当防衛なのだから仕方ない……よな。

 それにしてもここはいったいどこなのだろう。


「家を探そうにも一軒もないし、近くにひとはいないな」


 もし人がいたとしても、さっきの戦いが終わった後だからどこかに逃げて行ったのかもしれないな。


「しょうがない、少しこいつを使ってみるか」


 ポケットの中からある道具を取り出す。

 これは魔術を使って飛んでくれる、これを使えば近くに町があった場合にすぐに見つけられるだろう。


「行ってこい」


 魔術を大量に使ったので複数台使用することは難しかった。

 まあ一つでもそこまで支障はないはずだ。

 そう思いながら探索していると、自分の背後のほうから声が聞こえてきた。


「もしかしてリック?」


「その声はキャムか。お前も無事だったんだな」


「僕は大丈夫だったよ! ……まあ一人じゃなくてよかった」


「私もここに飛ばされていて怖かったからキャムが見つかってよかった」


「その様子だと魔王とブラッドにはあってないみたいだね」


「ついさっきまで戦闘をしていたものでな、これから探そうと思っていたんだ」


「それじゃあ一緒に探さない?」


「二人で一緒にいたほうが落ち着くし、お願いする」


 とにかく、ここに一人でいるわけでなくて安心できた。

 それにしてもどうしてこんな場所に飛ばされたのだろうか。

 不思議だったがそれよりも先に魔王とブラッドのことを探さなければ。


「それじゃあそろそろ出発しよう。もしかしたら二人も危ない状況に陥っているかもしれない」


「だねー、特にウェインと魔術神はかなり強いからね」


 魔術神の強さはみんな知っているが、ウェインも勇者ほどではないけれども強い。

 まあブラッドなら勝てるかもしれないけれど……ここは魔術神に選ばれた場所だからできるだけ早く見つけ出さないと。


「二人がいる場所の手がかりを見つけたいな」


「そういわれても見ず知らずの土地だから困ったな」


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