第53話
ローズたちの母親は数年前に借金を大量に抱えてある日突然いなくなったそうだ。
そして残されたのは借金のみと……。
「それで、いくらくらいあるんだ?」
「ざっと一千万シルバほどはあります。今もその返済をしているせいでこんな部屋に……ってごめんなさいね、こんな話しちゃって」
どうやら二人は金に困っているらしい。
そのくらいの金額なら今財布から出すこともできるが……。
かわいそうだからという理由だけで出したら受け取られないかもしれない、何かほかの理由を出せればいいのだが。
「そうだ、ローズ姉さまってすごいんだよ。ミリアの人たちが来るまで町長の代理してたんだ!」
「そうなのか?」
「代理といっても、命令されていたことをひたすらこなしていただけですよ」
「大体どれくらいの期間やってたんだ?」
「確か一か月くらいでしょうか。まだまだなれないですけどね」
いい理由が見つかった。これだけの実績があるのであれば渡してもいいだろう。
「その実績があるのであればお願いしたいことがあるのだが……。引き受けてくれるか?」
「メアリーに変なことをしなければなんでもいいですよ」
「二人とも俺のことを何だと思っている。ローズには俺の代わりに町の運営をやってもらいたいんだ」
「でも、お姉ちゃんにそんなこと……」
「こちらである程度の指示を出すから、それを実行してほしい。もしできるというのであれば……これくらいは出す。もちろん毎月の給料も大幅に昇給させる」
財布から札と宝石、それから金を出す。
すべて換金すれば三千万は硬いだろう。
「わかりました、この町のことはお姉ちゃんに任せて下さい」
「もう一つ聞いてもいいか? さっきからお姉ちゃんって言ってるのだが……」
そう聞くと、途端にローズの顔が赤くなる。
やはり無意識のうちにやっていたようだ。
「ごめんなさい魔王様、メアリーとたくさん話していたものだからつい」
「かわいいしそのまま続けてくれててもいいんだぞ」
「あー魔王様がまた浮気しようとしてる!」
「マーシャ、これのどこが浮気に見えるんだ」
いつの間にか消えていたメアリーとマーシャが戻ってきた。
そして開口一番俺のことを浮気者扱いする。
俺はいつだってマーシャのことを第一に考えているんだがな。
「私以外の人と話しているのは浮気じゃないの?」
「それじゃあ俺はマーシャとしか話せなくなるじゃないか」
「ダメなの?」
「ダメだよ、メアリーも魔王様と話したいことまだまだあるんだから!」
「メアリーちゃんが言うならしょうがないかぁ」
そういえば、俺もメアリーと今後の話をしておきたいな。
今はまだ昼だし……これから行くか。
「三人ともちょっと行きたいところができた。もしよかったら来てくれないか?」
「もちろんです魔王様!」
「マーシャが言うなら!」
「メアリーが行くなら!」
それでいいのか二人とも……。
とりあえず町の入り口の何もないところに到着した。
ここには何もない、しかしそれでいいんだ。
「それで魔王様。こんな何もない場所に連れてきて私たちに何をやらせるつもりなんですか?」
「このあたりに機械式のトロッコを設置したいと思ってな」
「トロッコって山の中とかで重い荷物を運ぶものじゃないの?」
「それのことであっている。多くの人と物資を運べるトロッコをここからシュリアまでつなげたいんだ」
「魔王様がさっき言ってたやつね。本当にやるつもりだったとは」
「俺はあんな冗談は言わない、もちろん報酬についても全部本当だからな。それでできそうか?」
メアリーに聞くと、彼女はその場にしゃがみこんであたりを見ている。
俺にはさっぱりわからないが考えている最中なのだろうか。
「メアリーにできるのはトロッコとレール、そして発着場の製造だけ。それの移動と土地の確保はほかの人に頼んで」
「物の移動はユストで募集をかけよう。土地の確保はこの後すぐに終わるだろうし。それで、どれくらいでできると思う?」
「手伝ってくれる人がたくさんいるのであれば明後日の朝までには製造できると思うよ」
「それで、トロッコは歩きと比べてどれくらい早く走れそうだ?」
「最初のものなら安全性とかも考えて人の十倍くらいが限界かな。改良とかも入れれあ最大で20倍までは出せるかもしれない」
今まで歩いて二時間弱かかっている。
それが10分ほどに短縮されるというのは非常に魅力的だ。
さらに多くの荷物を楽に運べるはずだ、これは多くの人に使ってもらえるようになるのでは。
「それじゃあ人員と材料の確保はローズに任せていいか?」
「お姉ちゃんに任せなさい!」
「……それじゃあ頼んだぞ。俺は今から邪魔になるであろう木を伐採してくるから」
「魔王様、私も一緒に行きます!」
「斧もなにも持たないでやるつもりなの?」
「まあ見てなさい。こんな木なんて軽くたたくだけで倒れるから」
バキッッ
バターー……
「魔王様どんな魔法使ってるの?」
「そんなもの使ってないさ、それじゃあまた明日な二人とも」
「うん。明日ね!」
「魔王様、今日はもう帰るのですか?」
「場所の確保もしないといけないし、何よりマリーがさみしがっているだろうからな」
「そうですね、マリーちゃんかなりの寂しがり屋ですしね」
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