第45話 勝利宣言


 翌日。


「えー、まあいろいろあったがこの村に訪れていた危険は過ぎ去った。なのでアルマルク国へ続く道もいつも通り使ってよいものとする」


 いつものように多くの人々がそれを聞いてくれた。

 勇者が攻めてきたということはまだ秘密にしているため、このような表現になってしまった。


「国王、質問いいですかい?」


「いいぞ、なんだ」


「この村に訪れていた脅威というのは勇者たちが攻めてきたことで間違いないんですか?」


 ……。

 どこからか情報が漏れていたらしい、まあずっと隠している予定ではないしここで話しても問題はないだろう。


「その通りだ、勇者たちはこの村のことを消し去るつもりだったそうだ。ただもう奴らは来ないので安心してほしい」


 しれっといわれていたので今まで気づかなかったが、国王って呼ばれたんだよな今。

 まあシュリア村長であり魔王帝国の王だからどっちでもあっているのか。


「それではほかに質問のあるやつはいるか? いないなら今日はもうお開きとする」


「それじゃあ質問! 昨日の戦闘での死者は何人ですか?」


「こちらはなし、相手が確認できた時点で一名だ。それではこれで終わりとする」


 やはり百人以上の前で話すとなると相当疲れる。

 いずれは誰かにこの村のことを任せることになるだろうし、それまでの辛抱か。


「魔王様、お疲れさまでした!」


「マーシャか。一人なのか?」


「もちろん私もいるわ。ちょっと仕事してたから遅くなっちゃった」


「仕事って……何か頼んだっけ?」


「村長の仕事を代わりにしといてあげたわよ。魔王疲れてるみたいだったし」


 そういえば昨日もやってくれたんだったな。

 まだお礼を言ってなかったっけ。


「昨日も今日もありがとうな」


「別に魔王さえよければこれからずっと村長代理としてやってあげててもいいのよ、意外と面白いっていうか悪くなかったし」


「そうか、それじゃあ細かいことは全部任せてもいいか?」


「あたしに任せなさい! どんな依頼でもこなして見せるわ」


「ありがとう、それじゃあこれから二件やらないといけないことがあるんだ。俺が計画を立てるから、それをやっておいてくれないか?」


「別にいいけど、どんなことするつもりなの?」


「まず一つ目は昨日も言った通り、動物と魔物の対策。農地に柵を設置したり、柵が壊れていないかの確認だ」


「それは急いでやらないといけないわね。何か大きな被害が出てからでは遅いし」


「えー、昨日のおいしいお肉食べられなくなっちゃうの?」


「大丈夫だマーシャ、村の外で狩ればいいだけだ。またいつでも食べられるぞ」


「やった! 私またあのお肉食べたい」


「それで二つ目が戦場跡地の観光化。文字通り戦場の跡地を観光地として売り出す。あの勇者が負けたと言えば多くの観光客が来るだろう、だから土産屋だったり娯楽施設をいくつか建設したい」


「お金に関しては何とかなると思う。ただそこで働く人を確保できないわ、ただでさえ人手不足なのに」


「人手に関しては俺が何とかする。昨日付けで魔王帝国はユストも統合したからそっちから引っ張ってくる」


「なんだか難しい話で頭がくるくるしちゃいます」


「マーシャにはまだ難しいか、まあそのうち何とかなるさ」


「そうよマーシャはまだ子供なんだし。そのうち魔王よりも頭よくなったりして」


「俺を抜かすよりもマリーを抜くのが先じゃないのか」


「何よそれ、私のことバカって言ってるわけ?」


 三人で笑う。

 この村にも俺たちにもまだまだやるべきことはたくさん残っている。

 敵もこれで攻めてこないというわけではないだろうし、ただ二人の笑顔と平和を守るためにもっと強くならなくては。

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