第28話 裕翠の選択


「そういえば祐翠くん、今週の皐月賞はG1 3連勝がかかってるんだよね?」


珍念の質問に祐翠が答える。


「ああ、大阪杯と桜花賞で2連勝中だから、今週で3連勝の記録の大チャンスなんだ。」


「その連勝記録は俺が止めてやるけどな!」


再び火花散らす両者だった。


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時は遡ること【大阪杯】


祐翠騎乗のシルバーグレイトで、昨年の年度代表馬のゼンノロイマクレガーを下す。

有馬記念のリベンジを達成した。


そして翌週の【桜花賞】


祐翠には桜花賞の乗り馬の選択を迫られていた。

1頭は当日の桜花賞で1番人気に支持されていたシザーリオン。

G3フラワーCを快勝して、3戦3勝の無敗で桜花賞に参戦。


もう1頭は4戦3勝、G2のフィリーズレビューを制したマインクラフト。

賞金的に早くから桜花賞出走が確定していた為、主戦の福山はこちらの馬で桜花賞を出走すると思われていた。


事実、同馬の桜花賞騎乗の打診は早々に本人に伝えられていた。しかしマインクラフトの桜花賞の背中には違う騎手が騎乗していた。


何と祐翠が桜花賞での騎乗に選んだのは、シザーリオンだった。マインクラフトの打診があった時点ではまだ新馬戦を勝ったのみのシザーリオンだったが、この馬の能力の高さを感じていた祐翠はマインクラフトの騎乗を断っていたのだ。


その行動に父の祐一は息子の決断の早さとスジを通した姿に感動していた。

自分だったら有力馬より先に打診された方の馬に乗って最善を尽くす道を選んだだろう。


しかし祐翠は自分が強いと思った馬を信じて、例えそれが失敗に終わり、桜花賞で騎乗馬がいなくてもいいという選択が取れる。


そして祐翠は結果も残したのだ。


そのマインクラフトをクビ差退けてシザーリオンを無敗の桜花賞馬に導いた。祐翠がジョッキーとして1段ステージを上げたといっていい出来事だった。


祐翠は2年目にして日本のジョッキー、外国人騎手を含めても5本の指に入るという競馬関係者もちらほら現れていた。


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