第16話 衝撃の末脚
祐翠「サイレンス…行くぞ!」
コーナーを周り直線に入る前からすでにスパート体制に入る祐翠とサイレンススタート!普段なら新馬は折り合いを重視して逃げずに馬群に入れて競馬する父の教えを守る祐翠だが、このレースは馬の長所を最大限に活かす競馬を選択したのだ。
『逃げる逃げる、サイレンススタート!影も踏ませないと言わんばかりの大逃げで2番手以下を大きく突き放す〜』
大逃げの馬がレース後半には差し馬のような切れ味を披露している。
「なんだこの馬は!」
「うちらのことは完全に眼中にないですって感じのレースをしてやがる」
せめて2着…サイレンススタートが直線に入る頃には2番手以降の騎手は皆既に思考を2着争いに変えていた。1人の騎手を除いて。
タイムをチラ見する祐一調教師。
先頭のサイレンススタートが直線に入り、タイムは1分21秒8。2番手のトウキョウボーイとは20馬身…約50mほどの差が付いている。しかし尚も着差を離さんとばかりの勢いのサイレンススタート。
本当に2歳の新馬なのかあの馬は!
京都競馬場で観戦中の人たちがあまりの衝撃に言葉を失っていた。
着差は圧倒的で体制は完全に決したと言っていい。
今後を考えるなら追う手を緩めてもいい展開。
しかし祐翠は手を緩めない。
「ここで手を緩めたら馬が楽することを覚えてしまう、ゴールまでしっかり追うぞ」
祐一「祐翠!それでいいぞ」
小和田「なんだよこの馬は…反則だろ」
全く止まる気配のないサイレンススタート。
このまま何もなくレースが終わる、皆がそう思っていた時。
違和感に1番初めに気づいたのは祐翠だった。
ドドドドド‥
祐翠「?!!!」
何かに気づいた祐翠が更に激しく追いはじめた。
「え?」
この後に及んで何故そこまで激しく追うんだ。
祐翠の必死の追いにビックリするジャッキー達。
その次に気づいたのは1着が決定したと思い2着争いを気にし出した観客とレースに騎乗しているジャッキーだった。
自分達の後ろから追ってくる馬の今までに聞いたことのない足音の大きさに‥
観客は2番手以降が団子馬群の中、その馬群からも大きく遅れていた馬が猛烈な勢いで近付いている姿に驚いた!
気づいたジャッキーはその音が一瞬で自分の後方から聞こえた音がすぐさま真横に聞こえることになる。
ビュイーーーン!!
F1カーが追っかけてくるような錯覚を感じた。
そして漆黒の馬体があっという間に馬群を追いついた。
《その馬は風切春馬騎乗のフラッシュフォワード》
ハイパーホーネット騎乗の岩崎騎手。
「風切くんか?」
シンガリ人気の馬のまさかの追い込み。
2番手の馬を射程圏に捕らえた。
トウキョウボーイ騎乗の池上が抵抗を見せる。
「この馬だってG1も狙える馬だと思ってるんだ!2着は譲れん」
「2着なんて狙ってません」
2番手トウキョウボーイ、3番手ハイパーホーネット、4番手フラッシュフォワード。
トウキョウボーイとハイパーホーネットが仕掛ける。
同馬とも新馬とは思えないほどの末脚を披露する。
しかし、フラッシュフォワードは争うまもなく両馬を抜き去った。
珍念「凄い!」
小和田「2歳馬離れした末脚だな。」
しかしサイレンススタートは2番手に上がったフラッシュフォワードよりも更に遥か先にいた。
小和田「風切の馬の末脚はなかなかだが、福山の馬には全然届かない。物凄い馬だなサイレンススタートは」
珍念「…うん」
フラッシュフォワードの末脚に驚いたのは観客達も同様だったが、それでも先頭には届きそうもない。
しかし、祐翠は未だに必死にサイレンススタートを追い続けていた。
「くっ…手を緩められない…」
必死の追いに息切れを起こしそうな祐翠とサイレンススタート。
馬も後ろから追ってくる異常な足音に必死に逃げていた。
「サイレンス?!怯えてるのか?」
依然として3ハロン33秒台の差し馬のような脚で逃げるサイレンススタート。
そんな馬との着差を徐々にではあるが縮めているフラッシュフォワード。
小和田「あの馬今何秒で走ってるんだ?!」
フラッシュフォワードが残り1ハロンの表札を通過、前を走るサイレンススタートとの着差は14〜15馬身。
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