大嫌いであり愛しい君の死を望む

黒詠詩音

第1話 告げられる残酷な真実

 晴天の空、それでもまだ肌寒い風が、吹いている公園。

 いつもは賑やかで、人が盛えている。

 だが、今回は誰もいない。

 その為か、彼女の言葉が良く聞こえ、彼女の言葉に戸惑いが隠せない。


「私さ、余命宣告されたんだよね」


 彼女は涼しい顔をしながら言う。

 俺は彼女の言葉に唖然とする事しか出来ない。


「やっぱ言われても迷惑だよね……」


 彼女……真昼は少し、寂しそうな表情をしている。

 真昼は少し一拍を置き、俺を見て笑顔を向け、そのまま立ち去ろうとした。


「え? どうしたの音羽?」


 真昼は目を大きく開き、驚いた様な顔をしていた。

 真昼が立ち去る寸前、俺は真昼の腕を掴み、引き止める。


「迷惑何かじゃない。俺が出来る事あるならば言ってくれ!」


 もしここで真昼が行くのを、見過ごせば俺はきっと後悔する。

 そんな、安直とも捉えられる。

 直感が働き、真昼を引き止めていた。

 真昼は一切動じる事なく。

 ただ、俺が発する、次の言葉を持っていた。

 次の言葉を言おうと口を開いた。

 だが、何を言えばいいか、分からず、馬鹿みたいに口を開けている。

 くそ、何でこんな肝心な時に一切言葉が出ない? 自分自身に自問自答をしている間。

 そんな中でも真昼は笑顔で、俺の言葉を待ってくれてる。


「君が望む事を何でもする。この

「……そんな事言わないでよ」


 次の瞬間、ドカッと俺に少し重みが掛かる。

 真昼が俺の胸に顔を埋めてた。

 少し経った時、真昼は俺を見ている。

 真昼の方を見ると、頬を膨らまし、ムスッとしていた。

 これだけ見てると、嫉妬した彼女見たいで可愛い。

 だけど、実際は違うだろう。

 真昼は俺の言葉に少し苛立ちを覚えたらしい。

 怒らしては駄目なのに、失言をしてしまったらしい。

 自分ではどの言葉が失言か、理解をしてない。


「君、絶対何がいけなかったか、分かってないでしょ!」

「ごめん。正直分からない」


 俺は真昼の言葉に対して、素直に答える。

 素直に答えたのが吉なのか、真昼は少し、不満そうにはしていたが、笑みを浮かべる。

 真昼は俺から少し離れ、一回転し、真剣な眼差しをしながら言った。


「私はもうすぐで死ぬと思う。だけど、君は死んでは駄目だよ?」


 死んでは駄目か。

 俺は真昼が

 元々、真昼の持病については知っていた。

 でもな、余命宣告をされるとは一切思わなかった。


「なぁ真昼。余命は後どのくらいなんだ?」

「え」


 真昼はまるで、聞かれないと思ったのか、戸惑っていた。

 まさか俺が聴くとは、思っていなかったか。

 実際聴くか、なんて自分でも分かっていなかった。


「うーんとそうだね、二ヶ月」


 二ヶ月!? 思ってた以上に早い。

 真昼はそれほど病気が進行している。

 くそ、なんで二ヶ月なんだよ! 後一年いや半年。

 そこまで時間があれば、助かる可能性を見つけてたかもしれない。

 あまりにも時間が短すぎる。

 俺は医学の知識なんか一切ない。

 真昼を救ってやりたくても俺では力不足。


「そんな顔をしないでよ。仕方ない事何だからさ」


 真昼はもう諦め付いている。

 ……それはそうか。

 自分の体なんだから、治る、治らない何て、いくらでも分かる。

 だとしても俺は諦めたくない。

 俺が真昼を助ける方法を探すのは無謀。

 または無意味だと思われても仕方ない。

 だからといって、諦めてたまるかよ。


「真昼……俺は諦めない。

「気持ちだけ受け取るよ」


 真昼は俺の言葉に対し苦笑をしていた。

 きっと無謀だからしなくていい。

 と、でも思ってそうだ。

 悪いな真昼、俺はお前が思っている以上に諦めが悪い。


「真昼。俺に何かして欲しい事ないのか?」

「え? あ、ああ。そう言えばそんな事言ってたね」

「お前、もしかして忘れてたのか?」

「えっとてへ」


 真昼を片目をウィンクし舌を出した。

 所謂いわゆるてへぺろだ。

 真昼の端正な顔だと様になっている。

 だけど。


「……つうか古くね?」

「え、嘘!?」


 真昼は少し慌て踏めていた。

 俺はそんな真昼を見て、頬が緩む。


「何ニヤニヤしてんのよ!」

「一々気にするなよ」

「気にするよ!」


 真昼は俺の言葉に対して、強く言って来た。

 そんな真昼を余所に俺は抱き寄せた。


「え! どうしたの?」


 真昼はいきなりの事だったからか、驚きが隠せない様子だった。

 俺は真昼の目を見る。


「俺がしたかっただけだ。それより俺が出来る事はないか?」

「君はいつも急だよ。強いて言うならば、思い出作りをしたい!!」

「わかった! じゃあ明日から一緒に行こう」

「うん、学校はどうするの?」

「学校より、真昼と思い出をしたい」

「うん! そうだね」


 真昼は満面な笑みをして、俺の言葉に答えた。


「じゃあ今日はもう帰ろうか」

「うん」


 俺は真昼を離し、代わりに手を繋ぎ。

 そのまま帰路へと着く。

 真昼の家と俺の家は少し離れている。

 真昼の家は公園に近い。

 公園から出て、役五分もすれば一軒家が見える。

 一軒家にしては少し広い。

 そこが真昼の家。

 俺達は家の前で止まり、名残り惜しいが手を離した。


「もう家に着いちゃったな」

「また明日も会えるからさ」

「それはそうだけどね。やっぱ寂しいよ」

「明日、思い出作りの旅出るからさ」

「うん」

「じゃあ明日の準備とかしなよ」

「分かっているよ!」


 真昼はそう言いながら、家の扉へと入っていた。

 俺は真昼が入って行くのを見守った。


「さてと、俺も帰るかな」


 俺は憂鬱な気分になりながら、自分の帰路へと着く。

 真昼の家から徒歩で三十分もすれば、十階建てのマンションがある。

 エントラス内に入り、エレベーターに乗って六階に下り四◯五号室に入った。


「ッ!? パリン」


 部屋中に音が響く。

 ガラスの破片が床に散る。


「くそ!」


 鏡に映った自分の顔が余りにも歪つ。

 その事に苛立ちを覚え、鏡を殴り割ってしまった。

 ガラスの破片から、右手が切れて血が出ている。

 手当をしないといけない。

 明日真昼に何か言われるな。

 でも、こうするしかなかった。

 真昼が余命宣告をされた。

 なのに俺は「?」

 くそが!! 怒りのままに壁を殴る。

 いま考えていても仕方ない。

 とりあえず手当てをしないと。







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