帝国のシオン~転生令嬢は月夜に舞う~
雛部亜子
序章
プロローグ
「リヴィ姉様、リヴィ姉様、なんで、なんで、いやぁぁぁぁぁぁぁ」
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コツコツコツコツ
「お客様、ようこそロータス帝国公認娼館<夜の華>へ。ご指名されました、高級娼婦シリンでございます。」
ダークブロンドに紫と青の瞳。背は高くもなく低くもなく。白桃色の肌に、瑞々しいさくらんぼのようなプルプルとした唇。豊満な胸に対比するかのような腰の細さ。
夜の華一の娼婦は「鈴蘭姫」と言われ、現在はシリンがそうだ。毎日のように指名が絶えないが、娼婦として相手をするのはわずかな日だけである。だが、シリンと一夜をともにした人はほとんど近いうちに亡くなってしまうという。これはシリンに限ったことではなく、歴代の鈴蘭姫がそうだったらしい。通り名の鈴蘭の花のように見た目では分からない毒を内に秘めているからなのか、それは誰にもわからない。
「シオン長官、今夜のお相手はどうでしたか?」
ロータス帝国諜報部長官補佐であるレナートは、いつも以上に不機嫌な自分の上司を見てそう言った。
「他の貴族が言っていることしか知らなかったわ。せっかく期待して待っていたのに、空振りよ。おまけに酒が弱くて、酔って一人で寝てしまったしね。鈴蘭姫が相手していたのに。」
そう、「夜の華」はロータス帝国諜報部が貴族や商人などから情報を得るために作られた娼館であり、歴代の鈴蘭姫は諜報部長官のシオンが変装した人物なのであった。しかし、シオンという名前も正確に言うと本名と言えない...
「姉さんのあの事故に嚙んでいる奴がいるはずなのに...」
こんなに手掛かりが見つからないなんておかしいのよ。
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