八話 『趣味』
美月さんと友達になって、数日が経った。そして友達が出来て浮かれていた私は重要な事を忘れていた。それは……
「あー、テストだる……」
テスト勉強のことだ。ここの学園は赤点が一個あるだけで留年がすぐに決定してしまう。厳しいように見えるが実際合格基準は20点未満だ。だから学力重視の生徒がそんなもので落ちる訳などない。
「はぁ……」
だが、適当にやるとそれはそれでお母様に怒られるし………だからしょうがなく私は勉強をしている。
「テストなんてなくなればいいのに」
そんなことを呟いてもテストは無くならない。それは分かっている。だけど、呟かないとやっていけない。
「……透華。どうかした?」
そんな事を思っていると、お兄様がやってきた。
「お兄様。……勉強が怠いんです。助けてください」
「俺が出来ることは透華に勉強を教えることだけしか出来ないけど……」
「!教えてくださるのですか!?お兄様が!」
思わず大きな声を出してしまった。だってお兄様は学園の憧れだ。そんな人がお兄様ということだけで私は誇らしいとそう思っていた。まぁ、実際はお兄様が凄いだけで私は何も凄くないんだけどね!
「じゃあ、ここ教えてください!お兄様!」
「はいはい。どこ?」
お兄様は分かりやすくそれでいて丁寧に教えてくれた。流石お兄様だ。これはみんなに自慢したくなる。まぁ、今はそんな我儘でも傲慢でもないし、そんなことはしないけどね!
「聞いてる?」
「聞いてますよ!お兄様!」
私はそう言いながらノートに書き込んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テストが終わった。結構出来た方だと自負している。……成績上位とまでは言わないけども。
「透華様、テストどうでしたか?」
そう思っていると、美月さんはそう言いってきた。私は胸を張りながらこう言った。
「ふふ……今回はお兄様に教えてもらったの!だからばっちりよ!」
「透華様のお兄様というと……悠真様ですわね…羨ましいですわ。あんな素敵なお兄様に勉強を教えて貰えるなんて…私の兄は野球しか頭になくて……」
美月さんのお兄さんは原作でも出てるんだよねー。野球をこよなく愛し、それ以外は全部捨てた、と言っている程には野球バカと呼ばれていて人気キャラとまではいかないものの、人気投票では必ず名前が上がるキャラだ。
「ふふ、そうなのですね……でも、お兄様も野球大好きなので意外と相性いいかもですよ?」
これは本当のことだ。作者の趣味かは知らないが、お兄様も野球のこと大好きだし。最も、お兄様は漫画の中では透華の口から語られないキャラなのでそんなこと考えていたのかは知らないが。
「……そ、そうなのですか?ちょっと意外でした……悠真様はテニスとかそういうものを嗜んでいるのかと思ってたので」
まぁ、それも否定はしないけど。でも、やはり一番な楽しそうに話すのは野球だ。野球を話しているお兄様も素敵といえば素敵なのだがお兄様は話し始めると止まらない性格をしている。それは野球に限った話ではなく、お兄様が熱中しているものはほとんど話が長く、そして止まらない。こうなったお兄様を止められるのはお母様しかいないのだ。母は強し。……そしてこの前、彼女と連絡していた、と思っていたのは野球関連だった、と知った時は凄くガッカリした。
「……そういえば今日でテストも終わったのですし、透華様がよろしければ……一緒に帰りませんか?」
「えっ」
そんなことを思っていると、思ってもない誘いが来て思わず固まってしまった。そんな態度の私に美月さんは慌てて……
「あ!勿論、透華様が嫌じゃなかったらの…」
「嫌なわけないじゃない!一緒に帰りましょう!」
そう言って私は美月さんの手を握った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます