第23話
ホーリーシップは奇襲に失敗した人々を回収した。
どの顔も打ちひしがれていた。
「カトリーヌ。人を殺してしまった」
エルネストは右手で髪の毛を握った。
カトリーヌは思った。
可哀想な坊ちゃん。
魔獣、幻獣、アンデットは倒せても、ヒューマノイドタイプは決して殺さなかった。
そんな依頼も受けなかった。
偶然出会ってしまったら脅して追い払った。
優しい人。
同時に心を殺すことも出来なかった。
「坊ちゃん、それはあなたが一人で乗り越えなくてはならない試練です。
大丈夫です、女神ソフィアはその人に乗り越えられない運命を与えはしません」
「ああ、そうだな」
ゴーストシップが空中に浮き上がる。
彼らが最後の突撃を敢行してくる。
船内にドヨメキが起こる。
「あの船を撃沈しろ」
グレゴリが叫んだ。
「無理です。
病院船ですょ、攻撃できる魔法使いは乗っていない。
いったい何を期待しているんですか。
持ち込んだ携帯機関銃で武装が最高ですよ」
「確か作業用の水陸両用巨神兵を積んでいたな」
「いまさら、いったい何をするつもりだ」
「マールズを追うに決まっているだろう。
あの帆船が突っ込んで来たという事はマールズは降りている」
「アンタ、どんな過去があれば、どんな怒りがあれば、女の子をそんなに憎めるのですか」
「ヤツは
「あなたは悲しい人だ」
黙ってグレゴリは巨神兵へ向かっていた。
「
総員退避しろ。
船足は向こうのほうが早い。
攻撃魔法は使っていない。
飛行石を爆発させる気かも知れん」
エルネストが逆方向に歩き出した。
船内の部屋につくと魔法陣を起動する。
聖印を結んだ。
青白い光が船から発せられる。
「坊ちゃん。何をやっているんですか、
早く脱出しないと、
最後の船が出てしまう」
脱出を指揮していたカトリーヌが走ってきて扉を開けた。
部屋の魔法陣が最大限輝いていた。
「
「坊ちゃんが何故そこまで背負わなくてはいけないのですか、アンデットは強制された人もいたでしょうけど、多くは死の精霊の引導を拒み、未練を選択した人々。
坊ちゃんが命をかけてまで救われる資格はない」
「ゴーストシップの最期に対する、ホーリーシップの意地だ。
誰かが聖印を維持せねばならない」
「坊ちゃん、止めて」
「カトリーヌ。
最後のお願いだ。
立派だったと伝えてくれ。
そして一族の掟を忘れて自由に生きて」
「イヤです。坊ちゃん。
血縁の中からしか選ばれないのですから」
カトリーヌがエルネストに抱きついた。
「坊ちゃん、あなたが死ぬ時は、私が死ぬ時です」
「馬鹿が・・」
魔法の光が2人を包む。
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