ゴーストシップ

鈴木

第1話

 燃えるバルコニーの上でマールズ姫は拳を強く握った。

 種が滅亡するのに、個体の生存に意味があるのか。

 革命の夜。

 多国籍軍が港を封鎖し、松明を手にした群衆が城門まで押し寄せてきた。

 大祖父様、お父様、お母様、一族の皆様方、私もあなた方と共に死にたかった。

 下唇を噛んだ。

 見下ろす軍船から火が上がった。

「始まった」

 人類の科学は1000年を待たずに原子力爆弾を開発し、日本に4つのタイプの違う品を落とすに至った。

 それでも我ら不死者ノスフェラトゥの戦闘能力は武装した人間の集団を遥かに凌駕する。

 そう我々は貴族。

 この人工惑星の支配者。

 緑豊かな地球と魔法のマナが豊かなパンゲアの中間に位置する恒星の水が蒸発しないアクアゾーンに、混沌の邪神ヨグソトースを連れてきてエネルギーを与え質量にした。

 大地の邪神ツァトゥグァを解体して石油、石炭やレアアースのある程度の大きさで解体した。

 エネルギー体の火の邪神クトゥグアを挿入した、移動するマグマによる磁力線の発生が無ければ太陽からの宇宙線で人間は住む事が出来ない。

 隕石対策で月を作った。

 風の邪神ハスターを分解し空気を発生させた。

 水の邪神クトゥルフを殺して水を流した。

 地形は地球を採用した、パンゲアは大陸が一つしか無く内陸は砂漠化し、沿岸部は嵐ばかりで魔法の使える強い種しか生き残れなかった。海に活路を見いだした種もいたが。

 微生物をばら撒き酸素を発生させ、宇宙船の実験では多くの種で交雑が可能だった。

 風土に合わせて両惑星から植物と動物振り分けた。

 繁殖力の強い魔法植物エリクサを中心とする生態系エコシステムが全ての生物にマナを供給した。

 植物の重量は全生物の99.9%に達した。

 ミミズ系の総重量は地中生物の8割、落ち葉は直ぐに土に変える

 巨大ミミズが土を食べ微生物の活性化する

 アマモ海の草、海のエリクサ。

 動く植物ミトグレナ。最弱で大量発生する、色々な動植物に魔力を供給している

 オキアミは世界最大の生物量。

 大祖父様が第一世代が調査に降りて来た時、それまで協力してきた宇宙人は戦争を起こし先史文明は崩壊、石と木からやり直し。

 技術者は死に絶え、道具は全てガラクタになった。

 確かに我々は人間の血を吸って生きてるが捕食している訳ではない。唯一女神ソフィアから根絶宣言される言われはない。

 それなのに人間は攻めてきた。

 棲み分けは終わった。

 もう言葉はもう通じない。

 ここから先は殺しあいだ。

「マールズ様、段取りが終了しました」

 初老の執事が40センチ程の木の箱を手に扉を開けて入ってきた。

 小さく息を吸った。

「そう、分かりました。では、行きましょう」

 精一杯微笑んだ。

 扉を閉め、カーテンを閉じても外の熱狂は静まりはしなかった。

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