第10話
「━━━━━━━はい?」
「いやだから、俺もギルドに連れてってくれ」
一瞬呆気に取られた後、私は聞き返してしまった。というか、聞き返しせざるおえない言葉が聞こえたので、無意識に出たのは当然と言うか必然と言うか。
男性であるレンくんが冒険者ギルドに行きたいという理由は何なのだろうかと考える。その言葉の真意は。なんでそうなった。どういう経緯があってその発言を私にしたのか。
考えれば考える程分からなくなる。男性は中々デリケートな生き物だと聞いた事あるが、こうも突拍子の無いことを言う存在なのだろうか。
ここで断ったらへそ曲げて今まで築いてきた親愛度マイナスカンストとかならないだろうか大丈夫だろうか。
レンくんはとても優しいしカッコイイしとても頼りになる。正直私の元でこれからの人生を過ごして欲しいぐらいにはのめり込んでると思う。
だってそうだろう。ちょっと薄着になった時、体の傷を見て心配してくれる男性が何処にいる?手の血豆が潰れ過ぎで皮膚が固くなっているボロボロの手を見て私の今までの頑張りを褒めてくれる男性が何処にいる?ルコアみたいに甘えられない私に優しくしてくれて甘やかしてくれる男性が何処にいる?
ここにいる。ここにしか居ない。絶対にここにしかいない。
男性は金で買われる存在だ。言ってしまえば、金さえ払えば夢の楽園が手に入る。女だらけの、しかもくっそ汚い顔面だけを見る絶望的な生活にほんの一滴、垂らされるだけで花畑に変わる存在が男性だ。世の中の女がどれだけ欲しいと思っているのか。
そして彼は、レンくんはそんな中でも飛び切り。確信して言える。彼がもし売られるとしたら最高額を超えるレベルで取引されると。国の一つや二つ転覆するぐらいの資金じゃないと買えないと思う。
男性は金で買われるとはいえ、高飛車な性格の人が多いという。女がいるお陰で生活出来ているとはいえ、彼らも自分たちが居なければ人類は滅亡するという大役を担っていることぐらいは認識しているからなのか。
だがまぁ、一つ言えることはその選択は間違っているし大成功とも言える。男性にとっては大失敗で、世の中の女達にとっては有難い副産物なのだ。生意気な態度をとる男性は購入者によって分からせられという、騎乗位マウントからの腰振り自分の立場というものを分からせる搾取プレイが女達の夢の一つになっている。
確かに魅力的ではある。立場というものを雑魚オスに教え込むというのは背徳的非人道的に性的興奮を抑えられない案件であると。
しかし、私はレンくんとの生活で身を持って知った。
尽くされることが何よりの幸せだと言うことを。
自分の為に何かをしてくれる彼。自分の事を大切にしてくれる彼。自分の事を気遣ってお互いに甘えられる器の広さを持つ彼。
なにそれスイーツ盛り合わせ?最高級果物ふんだんに使ってる?1食限定とか開店時間よりも前に並んでないと間に合わないじゃん。
彼との生活はバラ色だ。毎日がキラキラしていて、心も体も癒された。男らしくない身体付きとは言え、不格好では無く、寧ろ素敵過ぎて直視出来ないレベル。
彼は所謂レベチと言うやつなのだろう。控えめに言って最高過ぎる。
絶対に手離したくない。私の為に体を使って私の為に私を孕ませて欲しい。子供は何人でも産むし、私の為に性処理もやってもらいたい。散々甘やかして甘えて欲しいし、どちゃくそエグい交合いをしたい。
なんとでも言うがいい。世の中皆そうなのだ。現実は金で買えると言う事だ。私は買ってないがな。舞い降りてきた天使と言ったところだ。いや、レンくんの場合は大天使、熾天使、若しくは神様か。
上下の口からヨダレが止まらない。早くぐちゃぐちゃに犯して犯して犯し尽くしたい。
そしてそんな彼が、どうして冒険者ギルドに行きたいのか。今までの彼を見ていたら何処に冒険者ギルドに行ってみたいという発想になるのか、理解出来ない。
肉体的には確かに無駄の無い筋肉の付き方だ。
上級者の中でもレベルが違う冒険者。Sランクの冒険者に、1人筋骨隆々な人が居たが、レンくんと彼女の筋肉の付き方を見比べた時、成程と理解出来てしまう。
これが動ける筋肉の付き方なのだと。
質が良く、肥大し程よい弾力。何よりそのバランス。どれをとっても有り得ないレベルの身体がそこにある。
何をすればこうなるのかとか、どうしたらそうなったとか色々と思いつくのだけど、私の中では一貫して思う事がある。
どうしてそんな身体になったのか、と。
男性でこうも肉体改造をする人は見たことも聞いたこともない。彼の反応からして未登録男児だったから他とは違う生活の中でそうならざるを得なかった故に今の肉体がある、という事なら分かるが、彼の言動には些か疑問に思う事が多かった。
この世界に住む者なら誰でも分かることを、彼は知らないと言う返しをしてくる事が多かった。
何気無しに触りあっていた時、私の性欲が爆発しそうになった事があったが、彼はそのまま受け入れようとしたのだ。普通男性なら止めるか抵抗するだろう。女からすればそういう所も情緒擽られるのだが、あの時は流石に頭が冷静になった。
思い出せば、彼が目覚めた時ルコアとそういう雰囲気になっていた。
この顔もそうだ。こんなにも醜いのに彼は嫌悪感は抱かず、可愛いだのなんだのと産まれて初めてそんな言葉をかけてくれた。
男性としての、とは否定しにくいが、欠所というか抜けていると言うか。話に聞く男性像とはかけ離れた存在であるレンくんには、きっとなにか訳があるのだろう。
まだ腹の底から信頼関係が出来たら訳じゃないが、訳を話せるぐらいの関係にはなりたい。
彼が今冒険者ギルドに行きたいという理由も、これに通ずるものがあるからだろうか。
「理由を聞いても?」
まずはそこからだ。
冒険者ギルドに行く目的として、まず思い当たるのが冒険者登録をする事だ。ぶっちゃけこれ以外行く理由が思いつかないが。男性が冒険者になるという話は聞いた事がないが、冒険者ギルドに行きたいというのならそういうことなのだろう。
「あーとね、俺も冒険者になってみたいなってさ」
予想的中。これ以外に選択肢は無かったとはいえ、彼の事を分かってたかの様に予想を当てられたのでちょっと嬉しい。
しかしそうか。予想的中とはいえ、その後のことは考えていなかった。彼の頼みとはいえ、はいいいですよなんて二つ返事でいつもの様に返す話では無い。
命の危険があるのだ。男性だと特に。
「……えっとさ、別にレンくんが嫌いだからって断る訳じゃないよ?世間一般的には、男性は冒険者にならないって言うし。あんまりレンくんにはおすすめしたくないな……」
彼に嫌われるんじゃないかって少し臆病になってしまう。
確かに男性にはおすすめ、というか関わらせたくないのが本音。私はこれしか知らないからずっと冒険者のままだけど、彼にはそういう血腥い雰囲気や環境にいて欲しくない。
命の危険と言ったが、男性は特に酷い。魔物の中には雌個体しかいない種がいるのだが、アイツらは異種間交配が可能で、人間以外にも他の種の雄個体を捕まえては永遠に種付け竿として使われる。
異なる種と混じる為、アイツらは交配した種同士の特徴が出たりするので、人間とも交配できる結果亜人達とは違う別の形をした奇形体が生まれることもある。
「……いや、さ。危険な事……なんだと思うけどさ。ちょっと興味というか、好奇心というかなんというか……。見学とかさ、後ろから見てるだけでもいいんだ。登録するしないよりも、冒険者って言うのを見てみたいだけなんだ」
「ああ……、えっと、そう……なんだ……」
見せたくない。あんな気持ち悪いモノをレンくんに見せられない。もし見せてしまってショック死なんてしてしまったら、私も後追いして命を絶つ自信がある。
そこまで冒険者に興味を引かれるものとはなんだろうか。見るだけというのは構わないが、冒険者の仕事の大半は魔獣狩りがメイン。どこかの誰かが冒険者の事を何でも屋と思っているのか分からないが、報酬を払えのならば冒険者は依頼をこなしていくので探し物や素材集めの協力、家事の手伝いといった魔獣狩り以外の依頼もあるのだが。こちらは短時間で出来るものも多い為、人気があり過ぎる故にすぐに依頼が完了して依頼が無くなってしまうのだ。
そう思えば、見せることが出来るのは確実性を取って魔獣狩り。冒険者の醍醐味と言っても過言では無いのだが、男性にとってはショッキングな事が多い。
殺した後断面から流れる鮮血や腹を切れば臓物が飛び出し、死臭と血腥い不吉な匂いが鼻腔を刺激し、現れる魔獣は大抵気持ち悪い見た目しかしておらず、嫌悪感で出会い頭から思考回路が限界点をむかえる。
ヤバいの一言だ。そんなものを彼になんて見せられない。冒険者は女の仕事で女だけの世界なのだ。私の初恋をこんな所で潰えさせるわけには行かない。
「……冒険者って、ヤバいんだよ?上下関係激しいし小金持ちも多いからスリに会うこともあるし。なんなら脳筋ばっかだからレンくんが来たら間違いなくノーハンド絶頂キメる人が出るよ」
「何その魔境やば過ぎ!?」
「それだけじゃないの!!あんな発情した
「……そ、想像がつかんが、恐ろしい事だけは分かる」
よしすっごく動揺してる。ドン引きしてるように見えるけど多分気のせい。
無理やり脚色してでも興味を無くさせなければ。それに、レンくんが行ったら他の女に目移りしちゃう……。私達の元から居なくなってしまう。
そうならない為にも、ここは心を鬼にして。男性には厳しいという事実を少し誇張しながら教えなければ。
「……あー、なんかカンザシのその必至ぶりからして、相当やばいとこなんだな」
「そうっ、そうなの!!ものすんごいヤバいとこなの。……言っちゃえば、冒険者になる人って他の仕事に向いてないから職探して来る人が大半だし………」
一日で終わる依頼や数時間で早く終わる依頼なんかは、暗黙の了解として冒険者ランクが低い冒険者に回される。上位組しか知らない事だが、一攫千金を狙って命を落とす冒険者ガ後を絶たないため、最近は昇級や推薦といった、冒険者ランクを上げる試験が執り行われていない。
理由としては、冒険者として活動がまだ浅い者が死んで行くことが多い為、それぞれに見合ったモノを受けるスタンスになっているようだ。
実力が身につけば、個人的に昇級推薦をするそうだが、そのハードルも上がっているらしい。
私が冒険者として活動し初めの時はそこまで規制が激しい訳じゃなかったが、今の状態があの時から続いているのなら、私はもっと遅く昇級していただろう。
私が冒険者になったことには理由があるが、大半の人間に当てはまる事では無い、と思っている。最近思うが、もし自分が冒険者をやってなかったとして、果たしてどんな職についていたのか気になる。
「……じゃあさ、なんか身体を動かせるような所ない?正直そろそろじっとしてられなくてさ」
「……え?か、身体……?」
それは詰まり交尾という事?腰振りからのレンくん印の特濃超優秀雄様遺伝子ミルク玉袋で大量精製からの直送配達をするって事?
ダメだ頭が上手く回らない。聞いた感じ冒険者への興味は少し緩んだ様だが、今度は私の興味が湧いてきてしまった。
身体動かすってナニするの?手伝う?しゃぶってあげようか?扱く?私のお股にレンくんのを突き立てて上と下のお口で熱い接吻する?
「んーそう。なんかこう、得物を振り回したいというかさ。カンザシが持ってるそれみたいなやつ」
レンくんは私(の腰に差してある刀)をさして笑顔でそう言ってきた。
……え、え……?わ、私そんな振り回す得物なんて持ってないんですけど。持ってるとしても貴方の竿を収めるためだけの鞘しかついてないのですが。
「……えっと、あ、穴ならあります!!」
「はい?」
「あやばい間違えた……」
穴とか言ってしまった。入りたい、穴に。男性に穴とか言うなんて気でも狂ってるのか私は……。
「あ、え、あっと、ち、ちちちちがくてっ。ぶっ、武器っ。武器武器!!ちょ、ちょうど私の昔使ってたのがあるから!!」
「え?あっ、うん。ありが━━━━━━」
私は今すぐにでもこの場から逃げ出したかった。故に、取ってくる事をレンくんに伝えず、全速力で部屋に戻るのであった。
羞恥心で死んじゃうぅぅうううっ!!!なんでこんなにも頭の中真っピンクなのぉおおおお!!!!!
「……え、俺どうすりゃいいの?」
その後私はレンくんにひたすら謝り倒すのであった。
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