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五月十三日木曜日、午前七時前。
ゴールデンウィークを終えたばかりだが、既に外は真夏の陽気が漂い始めている。
日本の夏は湿気が多いが、ここのそれは想像を遙かに超えていた。
伊藤瑠依巡査は流れる汗を気にする余裕もなく、脳内に響く声に集中していた。
「えー、対象は『
千葉管理官が話していた内容をまとめる。
決して広くないワゴン車の中に大人が五人。無線で他の車両とも繋がっている為、精神的にはその何倍ものの人間がそこに居た。
その全員が管理官の言葉に頷く。
皆一様に気を張っている。というよりも「殺気立っている」という方が正しいかもしれない。
「今までの状況を見て、藤森が暴れる可能性は高い。だが、あくまでもこれは"任意同行"だ。手荒な真似はするな。特におい、坂岡、貴様だぞ」
「
何せ今日は大捕物だ。任意同行だとしても。
「では、──時間だ」
その声で車に乗っていた男女──世田谷区連続コンビニ強盗事件捜査本部の刑事達が動き始めた。
ゴミ出し途中で集まった近所の奥様方や出勤中らしいスーツ姿のサラリーマン、通学班に分かれた小学生や自転車に乗った中高生達。
誰もが突如現れたスーツの一団にぎょっとしたような表情を向ける。
何の変哲もない、平和な住宅街。
一つのグループはその中のとある民家へ向かい、他の人員がその家を取り囲むように位置を確認する。
「俺達も行くぞ、瑠依」
「はい!」
上長でありバディの坂岡に呼ばれ、瑠依は前を向いた。
これから彼らは『魔法使い』を
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