第3話 魔王集会、悪化する状況
目を覚ますと、再び見覚えのある暗黒の空間にいた。だが、この前と違い、人がかなり減っていて身動きが取れないほどじゃない。
「揃ったな。わが魔王たち。」
「各々準備はできたか?」
空から現れたのは、この前の3人の神のうち男の神2人だ。
赤髪の神が手をふると、俺たちの前に一冊のそこそこ分厚い本が出現する。
「それには全ての魔王の固有能力とダンジョンランクが載っている。それを見て目星をつけるんだな。」
「……ちょっと待て! そんなものを配布したら……!」
神がニヤニヤとしながら説明をする。
どうやら、魔王同士の潰し合い……ダンジョンバトルは、最初の1年で半年に一度しなければならないらしい。その時は、実際魔王が会って申し込む必要があるそうだ。拒否もできるが、ダンジョンバトルをすることが決まれば30日ダンジョンが封鎖され、準備期間を得られる。
ダンジョンバトルは異空間で行われて、その間時間は進まないという。そして、ダンジョンバトルをやるときは、事前に知らせが行きエントリーすればコアから異空間で観戦出来るらしい。他の魔王の手札を見れるいい機会なので、出来る限りいこうと思う。
その時、近くで声がした。
「ギャハハハ! なんだこの王の魔王って! 2回も王っつってんのに弱すぎだろ!」
「Gランクのみとか! かわいそうに」
「x付きしかできないんだってよ! もう絶望的だな!」
そこかしこから俺の噂が始まる。
なんと本のせいで狙われることになってしまった。
俺にとってはデメリットの方がでかいんだけど!? この本!
「さて……説明は以上だ。意外にも真面目に聞いているやつがいないな。」
「まぁあの本が見たくなるのは仕方ないか……後で渡せばよかったの。」
「まあいい、自業自得だ。」
神はそう言い残すと、俺たちをコアルームに強制送還した。
=====
「……マスター。どうでしたか?」
ガイドがどうだったか聞いてくる。俺はあったことをそのまま話した。
「まさかそんなことが…………神々の悪意を感じますね。」
「ああ。まあ、場所は乗ってないからすぐにはどうこうしないと思うけど……」
まずい……それでも非常にまずい状況だ。
だが、今はどうしようもないのでダンジョンの配置を何度も見直す。
モンスターの位置、トラップの設置場所、宝箱。
俺は見落としがないか確認して、時が過ぎて行くのを待った。
ちなみに、×付きのスケルトンはこけただけで死んでしまうというとんでもない雑魚なのでたまに勝手に数が減って困ってる。4種類の中では一番攻撃力が高いから大量に呼んでるが……
あと、×付きは大体2ランクダウンらしい。
そんなこんなでコアをいじってると、インターネットが見れるのを見つけた。他にもあって、ダンジョンをいじるアプリの他に魔王専用メッセージアプリ、地図があった。……どうやら魔王はインターネットに何かあげることができないようになっているらしい。つまり、見る専を強制されるわけだ。
ん?そういや地図見てなかったな。これは重要だぞ……立地とか立地とか。
「マスター。立地以外にも周りのダンジョンの数も大事です。」
「なあ、やっぱお前エスパーだろ。」
ダンジョン構築中もちょくちょくあったんだよな。魔王のガイドは心が少し読めるらしい。
地図アプリを立ち上げる。
そして……絶句する。
「えっ……」
ガイドも自分の身体(水晶)に表示された結果を見て驚いている。
俺は大阪に住んでいた。地図を見て思い出す。だがここは、岐阜県。そして周りには……
※ ☆がダンジョン ★は自分のダンジョン
| ☆ ☆ |
| ☆ |
| ☆ |
| ★ |
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| ☆ ☆ |
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| ☆ ☆ |
「なんでこの町に15個もダンジョンがあんだよっ!」
俺の町は中津川市というらしい。町じゃなかったけど、それどころじゃない。
すぐさまインターネットで検索。
日本には200万もの魔王がいるといった。1平方キロあたり5人くらいか。今表示されてるのはこの中津川市の一部、2×1で2平方キロメートルしかない。つまり割合で言えば10人のはずだ。ちなみにこの市には3382人の魔王がいる計算だ。
馬鹿げてる。
「はあ……逆境に次ぐ逆境かよ……」
「心中お察ししますよマスター」
俺は一応いつも神が喋ってる時は基本話に集中している。だからもう少し徳が高くてもいいのに……
「まあいい。そんなことより今すぐにでも対策を立てないとな。」
俺はユニークモンスターの怪鳥を召喚する。俺の持つ×印のない唯一の魔物。ユニークモンスターは死んでもランクに応じたDPを払えば復活できる。こいつの場合Fランクだから2500DPだ。
高い。
すぐにこれが苦じゃないときがくるんだろうか……
だが、多くのDPを支払ってでもユニークモンスターは置いておくべきだ。なぜなら、ユニークモンスターとは視覚や感覚を共有できる。
つまり、俺の場合便利な飛行タイプだから、飛んでって他人のダンジョンを見て回れたりする。声を届かせたりもできる。
「さて、お前怪鳥、じゃ呼びづらいし……ガルーダって名前、どうだ?」
俺は怪鳥(全長50センチ)に魔王の能力“意思疎通”で語りかける。
「クエエッ!」
怪鳥は喜ばしそうに羽を広げた。
名付け……ネームド化という概念が魔王には存在する。それは、DPを相応の量消費することで魔物を強くすることができるものだ。しかし、DPにゆとりがないので、仮名付けだ。
ガルーダを呼んだのにはもう1つ理由がある。
当然のことながらGランクしか作れない俺はまともな知性を持った魔物を持っていない。だから命令がどのくらいできるかを確かめる必要がある。
結果は、普通に人に物を頼むのと同じ程度のことができた。
スケルトンたちは敵を攻撃せよとかのレベルの命令で一つしかできないからな。コストは高いが、ガルーダにピンチは任せるしかない。
──夜。ガルーダやスケルトンたちを集めて、明日の戦いに備えるため魔王である俺が演説をする。
「明日だ。明日、ついに勇者がせめてくる。」
俺の言葉に、ガルーダを筆頭とした2000の魔物たちは殺気立つ。後の8000体?入り切らん。一番広いこの墓地でも2000で限界だ。
モンスターハウストラップに10000もスケルトンたちがいるのはガンガン数が減ることを予想しているからだ。一気に出る訳じゃないし。
「お前らは強い。確かに単体では最弱もいいところかもしれない。だが、お前らには数多の仲間たちがいる。」
魔物にはレベルがあるので、レベル100とかいったらスケルトンでも強くなるかもしれない。だが、それはかなり非現実的だ。
だからこその数。
迷路で長い時間いてもらって、初心者が入って来やすいようにスケルトンも少数配備。そして奥まで来られそうになったら数の暴力と威圧感で追い払う。
「明日以降は、とても辛い戦いになるだろう。休む間がないのかもしれない。俺はお前らを消耗品の用に扱うだろう。」
俺は魔王になった時に記憶がほぼ飛び、何かを見て思い出す時があるが、そうでなくても人殺しや仲間を道具のように扱うことに抵抗を覚えないはずはない。だが、魔王になってからというもの、罪悪感やらなんやらは霧のように霧散した。だから、慎み隠さず宣言する。
「それでも、この俺の配下に生まれたのならば、忠誠を示せ! 戦って、生き残るぞッッ!」
魔王の俺が配下に隠し事をしてなんになるのか。
配下の反応はガルーダ以外皆無だった。
ガルーダはバサバサと羽で了承を示してくれたが、スケルトンに至っては無反応だ。
その理由は、俺が命令したから。
何故って?だって……あいつら手をあげたりしてぐらついたらこけて死ぬし、あの密集度だと周りも巻き込みかねない。さっさとモンスターハウストラップに収納する。
「マスター……急にあのようなことを、なぜ……」
ガイドが俺らしくない言動と行動に疑問を抱く。
対する俺の返答は……
「魔王といえばこれだろ? 配下を鼓舞する。俺は王様らしいからな。魔王界でも」
この後しょうもない奴だ……と俺を蔑視しだしたガイドを説得するのに2時間かかった。
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