現代にダンジョン!?勇者!?え、俺魔王?

星影 迅

日本編

世界変貌編

第1話 プロローグ:え、魔王?


んあ……ここは?


目が覚めると、周りが真っ暗な知らない空間にいた。

周りは人で埋め尽くされている。


まるで日本人が全員集まったかのようだ。


それよりも……これは夢なのか?声が出ない。だが、異様にリアルな感覚、頬の痛み、現実としか思えない。


そして、その疑問を解消するように、上空が白く光る。

そこには、荘厳に輝く門があった.


ギィィィィ……


音を立てて開いた扉からは三人の白いローブの人間が出てきた。


2人が男で、1人は女だ。


その3人は人間味を感じさせない……そう、まるで神のようだった。


「あー、ニホン?という国の奴等、聞け。」


「我々は神である。この度、常日頃怠慢を働くお前らを働かせるために……おいっ聞け!」


自身を神と名乗った3人組は何やら喋れない俺たちの頭の中に語りかけてくる。周りの人は口を開けて近くの人と揺すぶりあったり、とにかく混乱状態だ。だが、神は無視して色々と説明ををしている。時々聞こえる勇者と魔王という言葉に、何やら聞き逃したら不味い気がして、集中して話を聞いた。


要約すると、俺たちが地球の惨状を本気でどうにかしようとせず、怠慢を働いているから強制的に争わせて減らそうということらしい。形式は、神が面白いからという理由で素質ある人間に魔王となってもらいダンジョンを守ってもらい、それを勇者側の人が攻めるらしい。


「他にも色々あるが、詳しくは現実に戻ってからそばに置いてあるガイドブックを見ろ。」


神がそういうと、急に意識がぼやけてきた。

おいっ! まじかこいつら言いたいことだけ言って質問も受け付けずに返す気か!?


俺は勇者という言葉に心を踊らせながらも、あまりにも乱暴な説明と扱いに不満を抱きながら意識を闇の中へと落とした。



「精々足掻いて見せろ。人間種ザコども。」



=====


目が覚めると、石造りの台座が一つあるだけの部屋にいた。

床が冷たい。

 

「ん……ここは……?」


さっきまでのは夢かと思ったが……知らない空間に1人でいることから現実なんだろう。

 とりあえず台座に置いてある金色の水晶玉を持ってみる。


 重さはただの水晶だな……って!?


「ま、まさか俺が……」

 

 神は言った。勇者は魔王が経営するダンジョンの最奥にあるダンジョンコアを破壊して、支配された土地を取り返し平和を取り戻せと。


「これはどう見てもダンジョンコア……ま、魔王?」


 どうやら、俺は魔王になったようだ。


 ガイドブックが台座の下にある。バッと広げてみると……


『魔王向け ダンジョン経営ガイド!』


 と書かれてある。


 勇者じゃなくて魔王なの!?


 ……勇者が良かったなぁ


「とりあえず、魔王ってことは殺されるんだろ……?なら準備期間に急いで準備しないと」


 色々な国を回って来て、たまたま日本が最後になったため、準備期間が一週間ではなく4日しかない。その代わりに不利な魔王には特典があるらしい。


 ん?待てよ、記憶に違和感を感じる。


 何も思い出せない。


 思い出すのは元々人間だったことくらいで、その他の自分のことに関しては名前すら思い出せない。


 とりあえずガイドを読んでみた。


 どうやら俺たち魔王は日本に200万人いるらしい。


「は!? 多すぎだろっ! どういうことだよっ?」


 まあ、文句言ってても仕方ないので読み進める。


 魔王にはそれぞれ固有の力があり、それを名前がわりにするらしい。ちなみに、倒した魔王の能力は一部貰えて、所持していたDPは全てもらえるようだ。魔物は種類によるらしい。


 DPというのは、ダンジョンに関する全てのことにおいて必要なポイントだ。恐らく、ダンジョンポイントから来ていると思われる。魔王は配下や食料、武器などを生み出せるが、それらには見合った量のDPがいるらしい。主に人間をダンジョンで殺したり、ダンジョンに居座らせることで少しずつ貯まるみたいだ。


「んで……活動を補佐する“コアガイド”がコアの中にあるって?」


「はい、マスター。何なりとお申し付けください。」


「うぉっ!?」


 いきなり金色の水晶から綺麗な女性の声が聞こえた。驚いてそちらをみると、先ほどと何ら変わらない水晶がある。


 これが魔王に従順なコアガイドとやらか。


 1人では孤独で死ぬかもと考えたが、人間味のある女性の声で安心した。

 じゃあ試しに、名前と能力を聞いておこうかな。


「じゃあ、俺の名前と能力を教えてくれ。」


「了解。……name王の魔王 固有能力 召喚できる魔物が最低ランクのGのみ。全ての生成するモンスターがxバッテン付きになる。まれに召喚する魔物が怪我を負って召喚される。 ユニークモンスターは 怪鳥 です。」


 おおう……情報量が多い。一つずつ整理していくか……


 どうやら俺は王の魔王って名前らしいな。王の魔王って……なぜ王と2回呼ぶ。


 ん?いや、まて。今さらっととんでもないこと言わなかったか?


「ちょっと、もう一回言ってくれ。」


 俺は震える声で問う。頼むから聞き間違いであってくれ。


「了解。……name王の魔王 固有能力 召喚できる魔物がGのみ。全ての生成するモンスターがxバッテン付きになる。まれに召喚する魔物が怪我を負って召喚される。 ユニークモンスターは 怪鳥 です。」


 ……聞き間違いじゃねぇ。


 俺は最弱のGランクしか召喚できない。しかも怪我してるかもだと……!?

 めちゃクチャにも程がある。弱すぎる。


 勇者と違って魔王は生まれつきで強いか弱いかがほぼ決まる。魔王同士で潰し合いもしなければならないことを考えれば絶望的無理ゲーだ。


 ユニークモンスターというのは魔王が一体だけ持つ、視覚や感覚を共有できる魔物だ。特典で、本来ならダンジョンの難易度に応じて変わるダンジョンランクというのと同じランクのモンスターになるのだが、プラス1ランクしてくれた。よって俺のユニークモンスターの怪鳥?というモンスターのみはFランクだ。


あとは……


俺は謎のxバッテンというものを調べる。


これだけ他にデメリットがあるならこの能力は相当強いはずだ。このGランクしか生成できないという状況を打破することができる何かが。あるはずだ。


俺は最後の望みをかけてガイドに聞く。


その結果は……

「xバッテンとは、出来損ないの証で能力大幅ダウン、倒した相手からの取得DP半減、レベルが上がりづらい、繁殖する魔物も繁殖しなくなる効果があります。」


 もはや俺には、絶望しかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る