第23話
刑務所には毎週のように紗良と真帆が面会に来た。二人は来るたびに涼真に「ありがとう。ごめんね」を繰り返した。涼真は笑って「家族を守るのは一家の大黒柱の務めだ」と言うと、二人は笑いながら涙も見せた。
真帆は来るたびに大きくなっていくような気がした。学校の事や友達の事、お母さんの事も良く喋って楽しかった。「彼氏は出来たか」と訊いたら、俯いて頬を染めているので紗良を見ると頷いて「先週、家に遊びに来たわよ。なかなかハンサムで優しそうな彼だったわよ。そうねぇ、ちょっとぱぱに似てたかな?真帆」と意地悪な質問をすると一層頬を染めて「いや、彼の方が良い男だもん」と自慢げに微笑んだ。
俺は笑って「そうか、良かったな。クラスメイトか?」と訊いてみる。
「いや、一年先輩」
「どうやって、知り合った?」
「同じ部活よ」
「へぇ、吹奏楽だっけ?」
「違うってば、合唱部よ。ぱぱに何回も言ったよね」俺を攻めて来る。
「ははは、ごめん。ぱぱ年食って老化が始まったのかもな。真帆、ぱぱの面倒見てくれな」そう冗談を言うと「止めてよ、老化だなんて、ここ出たら一緒に遊んで、食べて、色々やりたいこと一杯あるんだから!」真面目に受け取ってしまった真帆は涙をみせる。
可愛くてしようがない。直ぐにでも抱きしめてあげたい、気持ちが昂り涙が出てきた。
それを見て紗良が「あらぁ、ぱぱ、泣いてる。相変わらずぱぱと真帆は仲良しねぇ、私の入る場所ないみたいね」と僻んだ振りをし口を尖らせる。
「ままっ、良い大人が僻むんじゃないの、私、ママの事も大好きだからネ」真帆がまるで子供をあやすように喋るので、可笑しくて三人で大笑いをした。
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