第5話【死の谷】探索開始なう!【着いた(*・ω・*)wkwk】3

件の巨大蟻塚までたどり着いた。

かかった時間は1時間ほどだ。

蟻塚の近くには、警備員達が常駐しているテントがあった。

テントの横にはパイプ椅子があり、そこに銃器を装備した男性が二人、座っていた。

一人は金髪に長い耳、透き通るような肌と整った顔立ちが特徴のエルフ族。

一人は赤黒い肌と筋骨隆々の体、頭には一対の角が生えた鬼人族である。

男性達はユートに気づくと立ち上がり、気さくに話しかけてきた。


「グループの友達とはぐれたのかい?」


「歩いてきて疲れたろ、お茶飲むか?」


ユートは愛想笑いを浮かべて、一人で来たことを告げる。

日帰りとはいえ、一人で、しかも人間族の学生がこんなところに来るのは珍しいらしい。


「しかし、こんなところに客が来るとは。

なにもないぞ??」


鬼人族の男に問われ、ユートは嘘ではない返答をする。


「サイトを見たんです。

神様が住んでた場所なんですよね?

とても興味があって、ここまで来たんですよ。

あ!どうせだし記念撮影いいですか?

自撮り棒持ってきたんで、一緒に撮りませんか?」


ユートのノリに乗せられて、というばかりではないが暇をしていたのも事実なので鬼人族の男とエルフ族の男は快諾してくれた。

男三人、むさ苦しい自撮り画像が撮れた。

それから有難く出されたお茶に口をつけた。

とても冷えてて美味しいお茶だった。


それらを、掲示板に書き込む。

すぐに反応があった。


■■■


672:考察厨兼迷探偵

丁度いいから、いろいろ聞いてくれ


673:魔眼保持者

いろいろって、例えば??


674:考察厨兼迷探偵

そうだなぁ


・神様の外見、他の昔話のバージョンはないのか


これを聞いてくれ

あとは、この遺跡ホムペの説明書きだと中に入れるっぽいから

撮影できるか聞いて出来そうだったら、画像貼り付けてくれ


675:魔眼保持者

りょーかい(*`・ω・)ゞ


676:名無しの冒険者

でも、見たところ警備がメインだろ

伝承とか、特定班が調べた以上のこと知ってるんだろうか?


677:名無しの冒険者

まぁ、聞いてみてだろ


■■■


結果だけを言うなら、警備員達は特定班が調べてくれた情報に、毛が生えた程度のことしか知らなかった。

それでも、有益な情報には変わりなかった。

それによると、神様はとても巨大な蟻の姿らしい。

大型トラックのじつに二倍くらいの大きさだったらしい。

その説明を聞いたユートは、伝承の中の神様を想像する。

そして、


(いや、デケェよ?!

なにその、オバケ蟻??!!)


と、内心でツッコミを入れた。

現代の、大蟻系モンスターはせいぜい熊くらいの大きさだ。

それと比べても巨大すぎる。


「もしかしたらこの荒野にまだ生き残りがいるんじゃないかって、そんな話もあるんだぞ」


ガハハと鬼人族が豪快に笑って見せた。

エルフが呆れた顔をする。


「お前なー、園児を相手にしてるんじゃないんだ。

この子は、高校生だろ?

さすがに本気にしないって」


どうやら、脅かされていたようだ。

ユートは曖昧に笑ってみせた。


「生き残り、ですか」


「おや、君はこういう話がすきなのか」


エルフはユートの反応に、どうやら話に食いついたと思ったらしい。


「えぇ、まぁ。

幻のなんたら、とか都市伝説系の話、結構好きです」


ユートの言葉に気を良くした鬼人族が、さらに言ってきた。


「そうか!

なら、とっておきだ。

おもしろい話を聞かせてやるぞ!!」


鬼人族の横で、エルフがあちゃーという顔をした。

どうやらこの鬼人族が話し相手に飢えていたと、ユートが知ったのは『おもしろい話』を聞き終えた後だった。

それからさらに気を良くした鬼人族が、遺跡内を案内してくれることになった。

遺跡内に入るには、入場料が別途かかることを、ユートはこの時知った。

さらに、この警備員達はガイド役もするらしい。

それにもお金がかかると知った。

ここで、ユートは気づいた。


(あれ?

観光地って、食べ物以外でも金、吸い上げるシステムなの?)


別にお金が足りないわけではないが、まさかことあるごとに客に金を落とさせるようになっているとは思っていなかったのだ。

しかし、ユートの反応が気に入ったのか鬼人族は、


「今日は特別、出血大サービスだ!

無料でいいぞ!!」


なんて気前よく言ってくる。


「え、でも」


さすがに遠慮するユートに、エルフがやれやれとという顔をして言ってきた。


「さっきも言っただろう。

こいつは会話に飢えてたんだ。

すまないが、付き合ってやってくれ少年」


「はぁ、わかりました」


そうして、ユートは鬼人族のガイドとともに遺跡に入った。

丁寧な説明や、謂れを聞く。

とてもわかりやすく、楽しい語りだった。

それによると、遺跡内はまさに蟻の巣のようにいくつもの小部屋があった。

順路には、迷ったり転んだりしないようにちゃんと灯りが設置されている。

その道順に沿って、各小部屋を案内された。


「最初は古代文明を支配した王様の墓かもと言われてたんだ。

でも、調査や研究が進められていくうちにそうじゃないってわかった。

その過程で、公式ホームページにも載っている伝承に行き当たった。

で、三千年前を知る長命種族、この荒野の近隣に住むエルフを探し出して話を聞いたんだが。

三千歳ってなると、エルフでもボケが始まる年齢らしくてな、ざっくりとした昔話しか話してくれなかったらしい」


「なるほど」


「それとは別に、当時の記録みたいなものが見つかった。

それを手がかりに調査した結果、神様は巨大な蟻のモンスターで、数年おきに卵を産むために村々を襲っていたことがわかった。

当時は、エルフの魔法でもってしてもこの大蟻を退治することは出来なかったらしい。

そこでどうなったかと言うと。

さて、どうなったでしょう??」


ニィっと笑って、鬼人族が聞いてくる。

ユートは答える。


「生け贄制度が出来た?」


「正解!」


ユートの返答に大満足して、鬼人族はさらに説明を続ける。

ふと、ユートは順路の先を見た。

外が見えた。

どうやら、もうすぐこの遺跡内見学も終わりらしい。


「そう、それが伝承の正体だ。

まぁ、お前さんは事前に調べて知ってるかもしれないが、ここは昔、【戻らずの荒野】と呼ばれてた。

その由来に繋がってくるってことだ」


つまり、生け贄にされてたのは若い娘ではなかった。

老若男女、口減らしで大蟻の餌にされたというわけだ。


「あれ?それなら、大蟻を退治したってのは?」


「あぁ、それも本当にあったことらしい。

時代的にはまだ魔王が世界を支配しようとしてたとされる時代だ。

その魔王を倒すために、聖王国【セラシム】から派遣された勇者によって倒されたらしい」


「わお、世界一有名な勇者が倒したってのは本当だったんですね」


「その通り。

で、大蟻を退治した礼にととある村の族長の娘が勇者に送られたということだ」


ちょうどよく、出口から外に出た。


「お話ありがとうございました!」


「いやいや、こちらこそ。

なにせ、ほらここマイナーだから滅多に観光客が来ないんだ。

でも、なにか金目の物があるんじゃないかとたまに泥棒やらが来て荒らすことがあってな」


だから、わざわざ警備員を置いているとの事だった。

遺跡から出てきた二人に、エルフが再度お茶を出してきた。

歩き回り、会話をしたのでほどよくその水分が身にしみた。

そうして一息ついた時だった。

テントの中がなにやら騒がしくなった。

かと思いきや、おそらく待機中だった人間族の警備員が出てきて鬼人族を呼ぶ。

鬼人族が呼ばれるまま、テントに入る。

それを見たエルフが、


「なんか緊急事態が起こったみたいだ。

けが人か、行方不明者でも出たかな」


なんて、呟いた。

たまに有るんだよねぇ、なんてのんびりと続ける。

バタバタと鬼人族が、今度は蜥蜴人族の警備員を伴って出てきた。

かと思うと、エルフへ手短に、


「トラブルが起こったらしい。

応援要請が来た。

出てくる。

少年はもう帰宅したほうがいい」


そう口にして、転移魔法を展開して蜥蜴人族と共にその場から何処へと転移してしまう。


(お、転移魔法だ。

ラッキー)


ユートは想定外の魔法を目視出来たことに、内心ガッツポーズした。


「じゃあ、俺はもう帰ります。

お茶、ありが」


ユートはお茶の礼を言おうとした時だ。

ドンッと、地面が揺れた。

かと思ったら、今まで見学していた遺跡に攻撃魔法がどこからともなく展開され、当たり、爆発した。


ちゅどおおおおおんん!!!!


エルフが咄嗟に、防御魔法を展開したお陰でユートは事なきを得た。

見えざるドーム、壁のようなものが二人を囲んでいる。

気づかれないように、ユートは魔眼を使用する。

爆発による煙で、視界は最悪だったからだ。

その煙の向こうに、ユートの魔眼はモンスターの影をとらえた。


「モンスターです!!

それも、でっかいやつ!!」


つい、ユートはそう口走った。

エルフがユートを見て、それからユートの視線の先を見ようとする。

エルフはユートの斜め後ろに立っていたので、幸い彼の魔眼には気づかなかった。

その時だった。

光る玉が次々と二人へ降り注ぐ。


「魔法で攻撃されてる?!

でも、どうして!!??」


エルフが叫んだ。

その時、ユートの目に映ったのは煙の向こうでモンスターがなにやら魔法を展開させている様子だった。

それを、魔眼を使って調べる。


「!!!」


モンスターがどんな魔法を使うのか、展開が完了する前に全てを見て、理解する。


(まずいまずいまずいまずい!!!!)


ユートは咄嗟に指を滑らせた。

防御魔法の外に、魔法陣を描く。

モンスターよりも早く、魔法を展開させる。


「え、君、それって」


エルフが驚いた声を上げたが、それは後回しである。


「貫けぇぇぇえええ!!」


ユートは、力ある言葉とともに魔法を放った。

広範囲攻撃魔法が、煙の向こうにいるモンスターへ直撃する。

再び、大爆発が起きた。


■■■


730:名無しの冒険者

なーなー、そういやちょい疑問なんだけど

結局魔眼ってなにが出来るの?

俺、詳しくなくてさ

知ってる人教えてクレメンス


731:名無しの冒険者

え、それ聞いちゃう?


732:名無しの冒険者

スレ主戻ってきたら聞けよ


733:考察厨兼迷探偵

>>730

お前が魔眼のことをどこまで知ってるかによるな


734:730

>>733

そうだなぁ

暴走した時が厄介で、場合によっちゃ軍隊を派遣して退治しなきゃいけないってことくらいかな


735:考察厨兼迷探偵

>>734

つーことは、じゃあなんでそこまでの大事になるのかってことも知らないってことでいいか?

どうして、魔眼保持者頑張は忌み嫌われているにも関わらず研究されているのかも知らないってことだよな?


736:730

まぁ、うん、そういうことかな


737:名無しの冒険者

そういや、俺も知らないや

なんか、皆が嫌ってるからそういうもんかなって思ってた


738:底辺冒険者

あー、そこからでござるか


439:特定班

まぁ、いつかどこかで知ることになるだろうから

説明してやるよ


740:特定班

魔眼保持者が忌み嫌われる理由

それは魔眼の能力が、全てを見透かすことができるから

そして、他人の魔法を盗み見てコピーできるからなんだ


741:名無しの冒険者

つまり?


742:底辺冒険者

簡単に言うと、頭の中を読まれてしまうんでござるよ

さらに、どんな魔法でも一瞬で理解、コピーできてしまうのでござる

そう、それこそ使用が禁止されてる、なんなら数人がかりでようやっと展開、発動できる魔法すらも魔眼で見て、コピーしてしまえるんでござる

発動も、魔眼保持者一人でできてしまう

この意味が、理解できない者はいないでござるな?


743:730

え、それって

もしかして、他国の秘密になっている魔法体系も瞬時にコピーして使えるってことか?!


744:特定班

まぁ、そういうことだ


745:考察厨兼迷探偵

そういうことだな

ちなみに、俺はちょい気になって

画面越しに魔眼保持者に頭を覗いてもらったら、その情報量の多さにさすがに脳の処理が追いつかず

魔眼保持者にゲロ吐かせたことあるぞ

(o´・ω-)b


746:名無しの冒険者

魔眼保持者になにやらせとんじゃ


747:名無しの冒険者

そりゃあ、嫌がられるわな


748:名無しの冒険者

ある意味、その国ごとの秘密を盗まれるようなもんだもん


749:特定班

加えて【鑑定】もできるから

個人の能力をそうと知られずすっぱ抜ける


750:名無しの冒険者

丸裸にされるわけか


751:特定班

そういうこと

さらに、国を滅ぼすほどの暴走をする危険性があるわけだ


752:730

危険視するし、忌み嫌うわけだよ

納得


753:特定班

でも、これ以上ない兵器や間者としては有効だろ?

魔眼保持者が研究施設、暗部と渡り歩いたのはこういう事情もあるんだろうな


754:名無しの冒険者

なるほどなぁ


755:名無しの冒険者

スネーク活動するには打って付けって言えばうってつけなのか


■■■

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