第2話 基本習得

 ふと気がついて自分を鑑定してみる。

 掌を見ながら(鑑定!)と頭の中で呟いてみる。


 〔高町晶・15才・♀・エルフ1/2,龍人族1/2・治癒魔法・結界魔法・生活魔法・魔力96・鑑定スキル・探索スキル〕


 あれっ15才? SPとかHPやMP何てのは出ないんだ。そして性別は・・・やはり♀と出るのか。

 魔力96は結界のドームを二つ作って強化を二回したので4減っているが、出入り口を作るのに失敗したのでその分の魔力は消費してないそうだ。

 結界ドームの出入り口の作り方を考え、見えない壁に手を当てて自分一人分の穴を想像して魔力を送ってみた。

 腕から魔力が抜ける感覚は無かったが、手を当てていた壁が消失している。


 《ん、ガイドちゃん、結界に穴を開けたけれど魔力が減った様にいんだけど・・・》


 《出来上がった物の変形に魔力は殆ど必要有りません。魔法使用も馴れればイメージに軽く魔力を乗せるだけで済みます》


 《それって強度を上げたり形を大きくしても、イメージ優先って事で良いのかな?》


 《そうです。この結界も強度と大きさや形をイメージしていれば、もっと強固で大きな物が作れます。様は慣れですね》


 流石は魔法だ、便利だねぇ。


 ガイドは3日と言ったので、その間に此の世界の基礎的な知識を仕入れる必要があるが、腹が減っては仕事にならない。


 マジックバッグのフラップを上げ、頭の中に浮かぶ在庫から食糧を探す。

 パンと干し肉らしき物と何やら固形物に芋の様な物しか見当たらない。


 《なあ、ガイドちゃん。食糧一ヶ月分って言ったよな、パンと干し肉らしき物に固形物と芋みたいな物しか無いんだが、入れ忘れた?》


 《パンが90個に干し肉も固形スープと芋も90個有ります》


 《て事は、一ヶ月三食同じメニューなのかな(怒!)》


 《森に入る者達と同じ物にしました。現在のマジックバッグの性能では、新鮮な食糧は4~5日で駄目になります》


 《このマジックバッグって、物が入るだけで時間遅延とか出来ないの》


 《魔力を込めれば、容量拡大と時間遅延機能も増大します。現在は3倍程度の時間遅延能力です》


 つまり一時間しか持たない物が三時間有効って事は、2日しか持たない料理は6日持つって事だよな。

 それでは保存可能な食料品しか入れられないって事だよな。


 容量拡大は現在の容量より大きな物を、無理矢理入れるイメージで魔力をバッグの口から入れるそうだ。

 それも、魔力を一気に70/100位入れると1㎥程容量拡大が出来るそうだ。


 時間遅延増大は、野菜や食品を翌日入れたままの状態で取り出す事をイメージして魔力を込めるのだが、イメージと必要な魔力量が同調しないと無理らしい。

 然も時間遅延は魔力を一気に80/100位込める必要が有るって、其れで一日遅延させる事が出来るんだと・・・翌日までしか持たない食料を一月持たせようとしたら30回。

 此じゃー手間と時間が矢鱈と掛かるし、必要魔力量からみてマジックバッグを作れる人間が極端に少ないって事だぞ。


 貰ったバッグはランク1と呼ばれる物で、1㎥の容量で3日って事は魔力70/100を1回と、80/100を3回魔力を込めているって事か。

 半年遅延の能力を付けようとすれば180回は魔力を込める必要が有るって・・・ラノベじゃないけどマジックバッグって無茶苦茶高価になるな。


 そう思って聞いてみたら、馴れれば1回の魔力注入で容量拡大や時間遅延も増えると言われた。

 但し容量拡大には、ランク1からランク2にするには70/100の魔力を7回追加する必要が有るって。

 そこからランク3に容量拡大するには、19回必要って・・・


 熟練度と個人差もあるが、一回の魔力注入で2~5倍程度増えるってのは、ひたすら練習しろって事か。

 因みに、一回の魔力量が足りない者は連続して2倍程度の魔力を込めれば、1回分程度増えるんだそうだ。


 試しに(鑑定!)〔マジックバッグ・容量約1㎥・時間遅延3倍程度〕と出た。

 容量拡大や時間延長に必要な魔力量は貰っているので、寝る前に魔力を込めるのが日課になりそう。


 取り敢えず腹だけは膨らまそうと思い。パンと干し肉に固形スープと言われた物を取り出す。

 金属製の皿に乗せ、マグカップに固形スープとやらを放り込む。


 《ガイドちゃん、お水が欲しいんだが》


 《生活魔法で出せます。カップか鍋を出し、その中に水を入れるイメージでウォーターと唱えて下さい。因みに種火はフレイム、明かりはライトで使えます。その他にクリーンとリフレッシュが使えます》


 生活魔法のフレイムを試したが、薪が無いのでお湯も沸かせずに貧しい食事になった。

 パンは乾パンに近い堅パンに固い塩味の干し肉に水で溶いたスープらしき物。

 早急にマジックバッグの容量を4~5倍にして、後はひたすら時間遅延に励むと誓う。


 身を守る結界を自在に使いこなせなければどうにもならないので、食後は結界の展開と出入り口を作る練習に励む。

 日が落ちると、ライトの明かりで此の世界の基礎知識を教わる。


 一日24時間、午前と午後の12時間制で一時間は60分。

 一週間は6日、一の週、二の週、三の週・・・

 一ヶ月は30日、一の月、二の月、三の月・・・

 一年は360日、各国とも万能神の統一歴を使用と単純明快。


 度量衡と寸法は地球と同じセンチメートルとキログラムと聞いたが、実際の原器が違うだろうが判りやすい。


 問題は通貨だ

 鉄貨、100ダーラ

 銅貨、1,000ダーラ

 銀貨、10,000ダーラ

 金貨、100,000ダーラ

 ミスリル金貨、1.000,000ダーラ(主に大商人の取引に使用)

 ミスリル大金貨10,000,000ダーラ(国家間取引や大商人の間にのみ流通)


 100ダーラは100円程度と思って間違いなさそうで、安いパン一個が買える。これ以下は100ダーラ分の抱き合わせ商法。

 オール硬貨の世界で、これ以下の貨幣を持つとなると大変だから仕方がないのだろう。


 一晩寝たが夜は寒い、ガイドに聞けば現在五月らしい。

 で俺は、五月に此の地に転移して来たから五月産まれだとさ、気楽に言ってくれるよ。

 不味い朝食を済ませてお湯を沸かす為の薪集めだが、迂闊に彷徨くと危険なので探索スキル使って危険な生物が居ないか確認する。

 勿論使用方法はガイド頼りになるが仕方がない。


 《水面に小石を落として出来た波紋が、広がる様子をイメージして下さい。探索する物や生物を探知すれば波紋に乱れが生じます。植物なら植物とイメージして下さい》


 《此って、纏めて探索出来ないの?》


 《馴れれば出来ますが、探索スキルの簡単な事から練習した方が宜しいでしょう。魔法もスキルも練習し習熟すれば自在に使いこなせる様になります。但し、習熟度は個人の資質にも依ります》


 ご尤もです。

 危険な生物を探す為に、イメージ上の水面に出来る波紋の広がりを注視する。

 波紋が消滅する寸前に乱れが出た、方位・・・正面右手距離・・・


 《ガイドさんよ、波紋が消える寸前に反応が出たのだけど、距離は判るかな》


 《無理です。個人の能力に依る物で基準が判りませんから、経験して距離を覚えて下さい》


 へいへい、お湯を諦めて結界を自在に使いこなす訓練を優先した。

 結界のドームの大きさは半径4メートル程度にし、強度は分厚い鋼鉄をイメージしする。

 ガイドに強度を確かめると、初めての結界より遥かに強い結界であると保証された。


 安心安全な結界が出来たらやることは一つ、結界の中に一回り小さな結界のドームを作っては壊す事を繰り返す。

 ドーム状の結界はバリアの一言で何時でも作れる様にし、壊すときはドーム・キャンセルと呪文を呟き、迂闊に結界が消滅しない様に癖づける。

 

 出入り口は壁に手を当てて左右に開き出ると閉まるイメージで左右に引き開ける。

 半日ドーム状の結界を造り出入りを繰り返してはキャンセルし、再び結界のドームを作るを繰り返す。

 お陰で出入り口も自分の身体の幅と高さ分を、無意識に造り閉じる事が出来る様になった。


 その間に治癒魔法の事を訊ねたが、怪我や病気が治った状態をイメージするか、治ることを祈って魔力を流すのだと言われた。

 此ばっかりは自分が怪我をして実験する訳にもいかずぶっつけ本番になりそう。


 3日目には探索で周囲に危険な生物が居ないことを確認して周辺から枯れ枝や落ち葉をかき集めることが出来た。

 何せ森に入る冒険者の装備しか無いので、タープをグランドシート代わりに敷き、フード付きのマントに包まって眠るので身体が痛い。

 小枝と落ち葉で寝床の改善と、暖かいものを飲める様にした。

 もっともお湯か固形スープを溶かした茶色い液体しか無いが、干し芋を入れたり干し肉を入れて柔らかくして目先を変えられる。


 落ち葉と小枝に火を付けると、完全に乾燥している訳ではないのでもうもうたる煙が結界のドーム内に充満し、危うく燻製になるところだった。

 急いでドームに縦のスリットを入れ排煙して事なきを得る。


 4日目の朝、このアリーュシュの世界で安全な生涯を送れますようにとお祈りされ、ガイドの反応が消えた。


 ガイドに聞いた一番近い集落は、北に10日程度の所に在り大きな街は東に10日程度だと聞かされた。

 どちらに向かうにせよもう少しの間は結界魔法の練習と、探索と鑑定を磨いてから行動する事に決めている。


 探索スキルは常に発動し周辺を探り不明な動物はオレンジ色に、危険な生物を赤色で表示出来る様になるのが第一目標だ。

 しかしこの3日間一匹の動物も見ていないが、ガイド曰く安全な場所に下ろしましたって。

 初日に《ぼんやりしていて、野獣と遭遇すれば殺されますよ》って言われたのは脅しだったみたい。

 探索に時たま反応が有るので、丸っきり安全って事でも無さそうなので油断大敵。

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