第40話 また邪魔扱い

「えっと……わ、わたし――です、か?」

 声を震わせながら、か細い声で尋ねる穂乃香。

「そうです。穂乃香さん。この作戦に貴女以上の適性を持つものはいない。特殊な魔道具を用い――」

 腸が煮えくり返る。見れば分かるだろうが! あんなに怯えているだろ!?。

 ……とてもじゃないが聞いていられない! 

 穂乃香を背に庇い、局長の言葉を怒声でかき消す。

「なんのつもりだ局長!!!!

「……なんのつもりとは?」

「穂乃香はまだ連盟に所属したばかりの新人だぞ!? わかってるだろ? つい最近、初めて依頼をこなしたばかりなんだ……。とてもじゃないが無理だ! ましてや、何が起こるかわからない悪性固体のえさに使うなどっ! 到底承服しかねる!! 人道に大きく反する行いだ! 連盟の長が下す判断ではないっ! クラン主として作戦への参加を断固拒否する!!」


「作戦への参加の有無を決めるのは貴方ではない。私は今、貴方が口にしたように連盟の長として彼女と話している。一、連盟員如きがでしゃばるな! 邪魔だっ!」

 冷たい声。見下すような視線。いつもの優し気な微笑はなく、感情を感じさせない酷薄な顔。局長としての彼女の姿なんだろう。……反吐が出る。

 そしてこんな時なのにっ!! 最後のワード邪魔でっ! 古傷こころが痛むっ! くそっったれ! 体調さえ万全ならっこんなっ! 

「知ったことかっ! ハァハァ、強い言葉で穂乃香を追い詰めて、ハァハァ、断れなくするだけだろうが!!」

「!! 状況が分かりませんか!? 一刻の猶予もないのです! 被害が出てからでは遅いのっ! 彼女でなければ──」

「穂乃香どいヴぉdfvでbても¥ぬvdっいいのかっ!!」

*訳・穂乃香がどうなってもいいのか!!


「!?」

「「「「なんて?」」」」

「漣さんっ!?」

 クソッ!! 思考がぼやけるっ! 馬鹿になりかけてやがる……。悍ましい言葉を聞いたせいだ! ……いきなり謎言語をかましたせいで回りが動揺している。

 は、はやく、あ、アレを飲まないと……ここでアホになっちまうわけにはいかない!! たどたどしい手つきアレを取り出し、震える手でやっとプルタブを開ける。  そして、一息に劇薬を飲み下す──(残り三本)

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」

 

 俺が息を整えている内に、穂乃香と交流のある連盟員たちも局長に嘆願するが──野太い声、フロイライト・刃によって封殺される。

「なぁ、奏さん……。穂乃香ちゃんを囮にするのは俺も反対だ。新人に任せていいもんじゃねぇ……。下手したら本当に死んじまうよ」

「そうよ局長。穂乃香ちゃんにはまだ────」

「これぁ穂乃香達の問題じゃあ!! 外野が口ぃ挟むんは俺が許さん。黙っとれ!」

 ……中立のつもりか? クソがっ! 先に刃さんに話付けてやがったな……妙な感じの正体はこれか。

 古株の刃さんが向こうに付いたせいで、みんな黙らされちまった……孤立無援──


「おうおうおうっ! 刃さんともあろうもんが情けねぇなぁ! いつの間に玉ぁ無くしちまったんだ?」

「そうだぜぃ~。そのでっかい図体が泣いてるぜ? 歴戦の狩人が雁首揃えてんのによぉ~、新人の女の子一人に縋るような真似するなんて、おれぁ恥ずかしいぜ?」

「俺ぁ、まぁ、その~なんだ? ……穂乃香ちゃんにいいとこ見せられりゃあ~いいんだけどよ……。刃さんよ、彼女見てみろよ? 全員で囲んで追い詰めて? お願いすりゃあ? そりゃやってくれるさ。いくら漣が必死んなって止めたってな。穂乃香ちゃんは良い子だからなぁ!! だけどよぉ! てめぇそれでいいのか!? あぁん!? 震えてる子に全部責任押し付けて、無理やり最前線に立たせんのか!!」

 タツ、みっちゃん、……ガス。

 三人が俺たちを囲み守るように立ちふさがってくれる。

「すまねぇ。感謝する……」

「ありがどう……。タツさん、みっちゃんさん、ガスざんっ!」

 穂乃香が堪え切れず嗚咽まじりに彼らに感謝を告げる。

「「「おうよっ!」」」


「……狩人連盟に入ったのなら危険が伴うのは承知のはずじゃぁ!! ……新人だとてほのか、だけを……だけを、とくべつあつかいは、でぎん!」

 刃さんは歯を食いしばり、必死の形相で言葉を放つ……。最後の方は堪え切れなかった涙に濡れていたが……。

 しかし──状況は悪いな……。局長と話をつけない限りは──

「日崎漣さん、並びにその御三方、彼女を大切に思う気持ちは理解しました。人として尊敬に値します。けれど、貴方達は連盟の人間だ。優先すべきは、人に被害を齎すモンスターを狩ること。弁えてください──と言ったところで、あなた達に意味はないのでしょう。ですから──これ以上駄々を捏ねるのなら私は、実力行使も辞さない。動けなくなる程度には痛い目にあってもらいます」

 志藤凛が威圧目的で魔力を飛ばしてくる。

 しかし──暴力的に来られると──

「「「「上等!!」」」」

「ヴォッフ!!」」

「ホノちゃん守るぞ~!」

 一気に反骨精神に火がついちゃうのが俺たち男の子♡

 相棒達もやる気満々! 負ける気はしねぇなぁ。

 負けじと魔力を漲らせる。さっきから頭に血が上りっ放しだ……。加減できねぇぞ? 本部のエリートがよぉ。

「漣さん! みんなやめてっ!!」

 穂乃香の静止の叫びが聞こえるが──奴さんに止まる気配がない。

「タツさん、みっちゃんさん? ガスさんには手加減してあげましょう。ですが──日崎さん、貴方は別だ」

「あぁん?」

「元より作戦実行時に貴方の席はない。作戦遂行に貴方は邪魔なんです」

「…………」

 


*後書き

 応援、☆、コメントくだちゃい。

 読んでくださり、ありがとごじゃます。

 私はエナドリ、糖分補給、キメ過ぎて糖尿病にならないか心配ですが元気です。頑張って毎日かきましゅ……。かひゅっ!











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