遠い幻……——重ねたギルティ

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「ねぇ、キレーだよね」


 少し涼しくなって来たから、アタシと幸子さちこは代々木公園に散歩に来た。


 水筒にあったかいミルクティーを淹れて、リュックを背負って。


 春、桜が舞う広場には、少し乾いた芝の上にいくつかの落ち葉が舞い降りていた。


 ミルクティーの煙ごしに幸子さちこを見ると、ホログラムモバイルから真珠の縮小ホログラムを投影していた。


「真珠ってさ、ミカの誕生石じゃん。いいね」


 レジャーシートが少し冷たい。


 アタシはフリースの膝掛けを2枚出して、一枚、幸子さちこにかけてやる。


「そ?ありがと」


 嫌な気はしない。っていうか、嬉しい。


「これさ、どーやって探すんだろうね」


「難しいよね……」


 この惑星ほしのどこかに生まれた真珠。


 それは灰色の海の底にあるのかもしれないし、氷に閉ざされた山の中にあるのかもしれない。


「もしかしたら、私たちが今まで行った場所にも、あったのかもしれないね」


「確かに」


 ディストレスとの因果関係がゼロとは思えなかった。


 ミルクティーがお腹に優しくて、風が少しあったかくなる。


「今はエリアBにあるんだっけ?」


「うん。……綺麗だよね」


「ね⭐︎」


 まだ少し緑の芝生に、落ち葉が舞う。


 ブルーグレーの空は、待ち望んでいた秋でもあって、少し冬みたいだった。


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