冷たい海……——常しえの水中花

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「どうしようか……」


 雪子せつこさんの古民家カフェみたいなお洒落な四畳半のダイニングテーブルで、サブローはひじをついて両手を組んでいた。


「ハイ!サプライズパーティーすれば良いと思いマス!鑑原かがみばら三女ちゃんは女子だし、そういうの喜ぶんじゃない?ていうかこのドリンクうまっ!!」


 雪子せつこさんのダイニングテーブルは四人掛けだから、雪子せつこさん、由子ゆうこさん、サブロー、アタシで一杯になってしまうから、リイヤとシュウジは折りたたみスツールに座っていたけど、スツールにもペルシャ柄のクッションシートが設えられていて、いちいちお洒落だ。


 東京湾の真珠についてのミーティングのはずが、アタシたちの暗い様子を察したのか、いつの間にか話が幸子さちこの誕生日をどうするか?という議題になっていた。


「僕も!幸子さちこさんサプライズ好きだし、普通に喜ぶと……思いますけど」


 雪子せつこさん特製のレモネードに浮かんだ氷を揺らし、シュウジも言った。


 アタシも普通ならそうだと思う。


 だけど、最近の幸子さちこの様子を思うと、喜んでくれるのか自信が無かった。


 それは雪子せつこさんと由子ゆうこさんも同じみたいで、ため息が生まれていく。


 幸子さちこの活躍で、HyLAハイラスタッフ求人応募者は爆発的に増えたし、搭乗者パイロット志願者も、協力者ステークホルダーも増えたけど……

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