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 アパート二階、突き当たり。


 白いプランターに、白のカトレアが風に揺れている。


 幸子さちこ先刻さっき、仕事に出かけた。


 ルビーと水晶がキラキラ光るサンキャッチャーが吊るされたドアをアタシはトントン、と叩いた。カトレアに美しい赤と、七色の光がキラキラと落ちる。


雪子せつこさん、居ますか?」


「ミカちゃん?どうぞ」


 ウチと同じドアは鍵がかかってなくて、ギィ、という音を立ててすぐに開いた。


「えっ」


 畳の上に、ペルシャ絨毯と焦茶のレトロなダイニングテーブルとガラスの電球傘の下、サブローと由子ゆうこさん、雪子せつこさんがコーヒーを飲んでいた。


「今、搭乗者パイロット研修の打ち合わせをしていたのよ。でもそろそろ休憩だから、ミカちゃんもどうぞ」


「あ、ありがとうございます」


 雪子せつこさんの四畳半は、ウチとは別のアパートみたいにレトロなカフェみたいにお洒落だ……


 六畳寝室の天蓋の向こうには、ペルシャの姫君の為に設られたような美しいベッドが透けて見えていた。


 ガラスと木の食器棚から出してきてくれた金の縁取りのコーヒーカップは、ここが新大久保に良くある木造風アパートだと忘れてしまいそうになるし、思わず目的も忘れてしまいそうになる。


 でも、アタシは少しでも知りたくてここに来たんだ。


 幸子さちこのことを。

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