318

 激しい嵐の後には、透き通るような快晴が待っている——。


 驚くほど綺麗なあおい空の下で、真っ白なイルカが自由に跳ぶ——……!


 そして強かに波間を制する鈍色の海蛇シーサーペントと、海の神秘を詰め込んだ美しい神の化身ホワイトドラゴンの間を、楽しげに泳ぐ——……。


「シー・リバティ・ドルフィンチーム、迎撃に備えてほしい」


 通信機から、サブローの激が飛ぶ。


「分かってる!」


 灰色の東京湾を三体の水中機体が潜っていく。


 自家発光機能があるフィンヨンレイダーと、リバティアタシたちのパルスを主体に暗い海に灯りを差していく。


「怖いなー海……」


 リイヤの軽い冗談に、気が抜けてくる。


「イルカよりも、海蛇シーサーペントのほうが若干羨ましいがな」


 ジュンもいつも通り。


 アタシは灰色の海が好きだ。


 先が見えない、薄暗い海でもアタシの育った東京の海。


 ここには生き物だっているし、日々の闇も、そこにある暖かさも、重たくて優しい水の中に、すべてる気がする。


「私、好きかも。ここの海」


 通信機からリディアの声がぽつりと聴こえた。


「先が見えない景色も、ワクワクするよね」


「そーだね」


 だからアタシも灰色が好きなのかも!


 東京湾内の磁場発生源の撮影……今日はそれだけだ。


 まぁ絶対、この先には危ないやつディストレスが居るんだろうけどねっ!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る