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 この前の誕生日——。


 ロボちゃんは猫のスカーフピンをくれた。グレーパールの瞳の猫のピン。


 レイチェルさんは黒のチェルシーブーツ。


 リイヤは銀色のマカロンをくれた。


 新しいブーツとグレーのスカーフにグレーの猫のピン。


 冴えない制服が可愛くなったみたいに感じて、朝、出かけるのが少し嬉しくなる。


「イヤリングも付けなよね」


 HRホームルームを待ちながら、そうちゃんが言うけれど、サブローとそうちゃんがくれた、イヤリング……


 彗星チタンで作られた白銀しろがね色の猫が跳ぶ姿が華奢な鎖で吊るされたイヤリング。


 瞳は寝待ち月アーモンドの形の、琥珀色の猫目石。


 でもこれが何かの光を映すたびに、キラキラ……キラッキラして……目立つんだよね。


 でも分かってる。


 サブローとそうちゃんには、女子にアクセサリーを贈るなんていう機微はナイ。ましてやこのアタシに。


 そう、これには仕掛けがあるのだ。


「ほっしー、どっちだ」


「2分後、……右」


 トレーニングルームのバーチャルエネミーをジュンとシュウジが次々ととしていく。


 アタシの右耳には、猫のイヤリングが揺れている。


「OK、実華みか!」


 アタシの攻撃は相変わらず当たらない……けど理解わかるのだ。ディストレス《やつら》がどこから来るのか。ひとつ残らず!!







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