「三島（みしま）、毎日が綱渡り過ぎる」

「……分かってる。それは俺の罪だ」

「俺たちの……だ」

　紡がれる罪と失った悲しみ。

　自分の生き方が正解なのか、ギリギリで繋いだ虚構（フィクション）なのか、わからない。

　分かち合える存在がいたからこそ、ここまでこれたのかもしれないし、来てしまったのかもしれない。

　失った輝きが眩し過ぎて、想いを、未来を、繋ぐことは愚かなのだろうか……。

「拓海（たくみ）は、一人でやりたいんだろう？」

　誰も巻き込まず、罰を受けるように。

「お前はとうに共犯だ、三島（みしま）」

　言葉とは裏腹に、こちらを見ない乾いた台詞（せりふ）は、去れとでも言うように頑なだ。

「そういうところ、仁花（にか）は嫌いだったと思うよ」

　そして、愛していた。

「くだらない」

　どんなに語しても仁花（あね）はいないし、拓海（たくみ）が愛した人はもう……——。

「サングラスはあげられないけど、これならやれるって」

　ポケットから水色のペンダントを取り出す。

「……いつも言うが、それはお前が持っていろ、三島（みしま）……俺は……それが大嫌いだ」

　そういう風に言い切る拓海（たくみ）は、何故か心が晴れたような穏やかな顔をする。

「俺は辞めないよ、お前がなんと言おうと」

「お前らには何を言っても無駄だ」

　俺は気づいている。

　拓海（こいつ）と出会えた仁花（あね）の人生が、幸せだったことを。

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