242

 ブルーホールの中は、静まり返っていた。


 水の音……。


 深い、深いブルーの中で、イリディセントレイダーの瞳だけが、うっすらと光っていた。


 宵闇に輝くおぼろ月みたいに。


 前にも後ろにも動けないブルーの中で、アタシだったら……苦しくて、泣きたくなる。


 言葉を重ねたくなる。


 だけど、さっきまで元気に談笑していたロボちゃんは、ひっそりと息を潜めて成り行きを待っていた。


「リイヤ、遠隔で尾を操作する。尾に重力を感じたら、振り返らずに上昇するんだ」


「分かった。……信じるよ、そう


「フフ、失敗したらリイヤも糸井いといさんも3ヶ月海の底だ」


「キッツイな(笑)」


「まぁ気楽に行こう!」


そうちゃん、アタシにも何か出来ること……」


「ありがとう、みっちゃん。今から海蛇うみへび糸井いといさんの緑虎りょっこのしっぽを連結して、引っ張り上げるつもりだ。二人は共にHハイドロMW《マイクロウェーブ》に耐性があり、釣り上がったら、玲鷗れおんのナノゲイルレイダーの竜巻で巻き上げて甲板で拾う。母艦のアクアフルールバリアを全開にしてね。ナノゲイル一機守り切れるか……というところだから……糸井いといさんが戻って来たら、医務室で付き添ってくれるかな?」


「分かった」


 そう言うしか無い自分……


 いくら心を痛めても、拳を握りしめても



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る