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 アタシは必死に明るい方へ、明るい方へ走った。


 冷たい夜風の中を……灯りを求めて。


 豪華客船を模したアトラクションの周りは、美しいイルミネーションと家族の笑い声や仲間と交わす微笑みに包まれていたけれど、アタシにはどこか遠い幻のように思えた。


 アタシにはこんなふうに、大切な人とこんな時間を過ごすことは無いのかもしれない……


「お姉ちゃん?泣いてるの?」


 知らない家族の知らない子どもが、心配そうにアタシを見上げる。


「大丈夫……」


 関わってはいけない。


 そういう思いできびすを返すと、見覚えのあるベージュのアロハにぶつかって、近くのベンチに座らせられる。


 ジェットコースターの悲鳴が、反響している……


「Hydro・light・academic・laboratory……HyLabハイラボのことは知っているかな」



アタシは滲んだ夜の灯りをじっと見つめた。


「……いえ」


HyLAハイラの前身の国家特務機関が持っていたハイドロレイダーやあらゆる学問に関する研究室……と言っても、今やその規模は拡大していて、あらゆる学者が所属、ジュニアハイスクール、ハイスクール、ユニバーシティの卒業資格が取れてしまう。その分室がこの春、対象生徒をレイダー搭乗者パイロットに拡大することになってね」

 

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