「アレってさ、ヤマタノオロチってやつだよね？」

　ショーコが冷静に残りの紅茶を啜（すす）っている。

「ハイ、そうです、多分。ハイ」

　アタシも震えながらアールグレイを含んだ。

　まだ暖かくて、少し落ちつく。……って、えっ？ショーコ！？

「な、何をやってるんですか？」

「ほっしぃ、何で敬語なのよ」

　いや、だって気持ちを落ちつけないと……少しでも。遠い富士山から、グネグネと動きながら、奴は真っ直ぐにこちらに向かって来るように見えた。

　ショーコは緩〜く結んだポニーテールをキツく括（くく）り直して、食器棚から取り出した緑の襷（たすき）でバルーンカーディガンの袖を素早く纏（まと）めた。

　冷蔵庫の横の緑のロッカーから、緑の粒子籐弓（りゅうしどうゆみ）を取り出す。

「ウチの亜空間バリアも、亜空間シェルターも使用不能……ディストレスが来てる。逃げ場、無し。じゃあさ、やってみるしかないよね」

　ショーコの弓が緑色に輝く。

「僕もそう思います」

　紅茶のカップを流しに片付けたシュウジは、水素針（すいそしん）を握りしめて、窓の外とホログラムモバイルを交互に見つめた。

「嫌な流れがあのヤマタノオロチ（ディストレス）から来ています。アイツを倒せば、もしかしたら……助かるかも！」

　いやいやいや、アイツ確か、宗（そう）ちゃんとシュウジがレイダーで手こずってた相手（やつ）だよね！？

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