薄明のハイドロレイダー

123

「「「ピー、ピー、ピー、ピー……」」」

　シュウジとアタシと、幸子（さちこ）のモバイルホログラムが同時に鳴った。

　立ち上げると、グレートブリテンの地図が展開し、ここ、エリアロンドンから、北へ700kmエリアパースのほど近い区域から、大量の黒い靄（もや）が溢れているのが確認された。

　靄（もや）は、グレートブリテン島を南下し、ここ、ロンドンに向かっているように見えた。

　——ハイドロレイダー、コランダムレイダー、出撃依頼。不可の場合、HyLA（ハイラ）-Eighth（エイス）を諦め、総員ブリュッセルに一次避難せよ！

「はっ？」

　Eighth（エイス）のトレーニングルームに、緊急テロップが浮かぶ。

　——スタッフ総員、HyLA（ハイラ）-First（ファースト）の搭乗者（パイロット）を補助（サポート）。ミッション続行中止アラートに備えよ！

「マックスさん！中止アラートが出たら、、どうなりますか！？」

　アタシたちが依頼を受けなかったら……。

　マックスは搾（しぼ）り出すように言った。

「避難（ワープ）……デス。グレートブリテン島ニイル、全員……」

　それってつまり……

「この島を捨てるってこと？」

　幸子（さちこ）がサブローに聞いた。

　朱（あか）くなった部屋で、サブローの表情は見えない。

　それでも、いい状況じゃないことはわかった。

「もともとEighth（エイス）はスコットランドのYEA（ヤー）観測のために置かれたんだ」