薄明のハイドロレイダー

118

　「ミカ！危ない！！！」

　コランダムレイダーが、モニターに飛び込んで来た。

　一瞬の……真っ赤な抱擁（ハグ）……

「嘘……」

　左手が動かない。

　振動と共に、モニターに切断されたハイドロレイダーの左腕が映る。

「姉（あね）！」

　何が起こっているのか分からなかった。

「対象（ディストレス）はどこ！？」

　モニターにはコランダムレイダー、蝋梅（ろうばい）の黄色い蕾（つぼみ）そして……

「ホッシー！シュウジ！後ろニ飛ンデクダサイ！！」

　漆黒（しっこく）のハイドロレイダー……

「黒い……靄（もや）……？」

　ハイドロレイダーを覆（おお）っていた黒い何かが、漆黒のレイダーに集まっていく。

「……闇ハドコマデモ続ク」

「オレノ強サガ敵ヲ討ツ」

「鳴リ響ケ！」

　HyLA（ハイラ）の円盤が、深い闇を照らす。

「ディストレス！！！」

「鼠（ねずみ）だ……夥（おびただ）しいほどの！」

「ファーレン！！！」

「レーゲンシュテルン！！！！！！！！」

　闇の中に、一筋の光……

　宝石みたいな、緑の流星。

　……雨。

　全てを撃ち抜く、幾億の輝き。

　消えていく小さな悪意たち（ディストレス）

　流星は反響し、ドラムのように大地を打ち鳴らす。

「バーキングアロー！」

　シュウジは躯体（くたい）に付いた鼠（ねずみ）を払って、水素針（すいそしん）を構えた。

　エメラルドと、白炎（びゃくえん）の、雨。

「ホッシー！シュウジ！ダイジョブデスカ？」

「大丈夫です！マックスさん！」

　黒い悪意（ディストレス）は、光の中に消えて行った。