第81話:そう言うのって重いから・・・。

嫁さんと付き合い始めた頃、僕は彼女を安心させたくて、

君とは遊びじゃないからね、ってつもりで


「将来は結婚、考えてるから」


って言ったら、めっちゃ引かれた。


真剣だよって言いたかったのに

女子高生には通用しなかったみたいね。


彼女の中では結婚なんて世界の果てのそのまた果ての話。

きっと、この人なに言ってんのって思ったに違いないんだ。


だから、彼女から返ってきた言葉が


「結婚なんて考えてない」って。

「そう言うのって重いから」って。


女子高生の頭の中には結婚なんて文字はなかったってことかな。

つうか彼女は恋愛に対してそれほど真剣には考えてなかったんだ。

僕ほどはね。


だから・・・今時の女子高生って言うか・・・いやいや、

そうじゃなくて僕がきっと古いタイプの人間だっただけのこと

なんだろう。


まあね、かなりの歳の差だからね。

彼女から見れば僕は立派なおじさんってことだし・・・。

ジェネレーションギャップってやつだよね。


だから結局、それからは結婚って言葉は、ふたりの間で一度も出て

こなかったかな。

ごく自然に、僕らは結婚するもんだって、いつの間にかそうなってた。

プロポーズの言葉はイブの夜、無理やり嫁さんに言わされたけど。


じゃ〜なんで、おじさんの僕と付き合ってるの?って話だけど・・・


前にも言ったけど


僕が、ぶちゃいくじゃなかったから・・・。


つまり、僕と付き合ってる理由はそういうことなのかな。

だから、こんなことも彼女から言われたことがある。


僕とデートして街中を歩いてると、すれ違う女子がみんな僕を

見ていくって・・・。

めっちゃ優越感だって。


まあ、それはね。


自慢するわけじゃないけど、彼女がいなかった時でも

街を歩いてると、すれ違う女性の熱い視線を感じてたのは自分でも

分かってたんだけど・・・。


だけど僕はそんなにカルい男じゃなかったから街で女性を

ナンパするなんてことしなかったからね。

案外真面目だったんだよ。


なもんで今でも、嫁さんはマンションに住んでる、同年代の

奥様たちから、◯◯ちゃんの旦那様、めっちゃイケメンだねって

言われるんだよって。


自慢じゃなくて・・・事実だから・・・。


だから「そうなの〜」ってノロケた上に「うちの旦那様めっちゃ優しいの〜」

って自慢してやるんだって、僕に報告してくるから・・・。


え〜友達にそんなこと吹聴したら優しくなくちゃいけないじゃんって思うよね。

いい旦那でいなきゃって思うでしょ。


旦那を持ち上げておいて尻に敷く・・・君は案外したたか。

でもまあ、それに甘んじてることが幸せなのかもね。


つづく。

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