第67話:使えなかったコンドーム。

実はこの話は小説として書いたこともあるんですが・・・。

事実、ほんとにあった笑えるような話です。


嫁さんと結婚して、まだ湯気がホヤホヤが立ってた頃だったと思います。

その時期、嫁さんは有給で会社を休んでいて家にいたんですね。

僕は、もう会社に復帰してて、出勤すると家には嫁さんひとりです。


で、仕事が終わってマンションに帰って台所にいる嫁さんに「ただいま」

ってチューしようと思ったら、キッチンテーブルの上に、見たことのない

四角いナイロン包みが・・・。


「なにこれ?」


って僕が嫁さんに聞いたら・・・


「買わされちゃった・・・」


って言うからね。


「え?、買わされたって?・・・誰に?・・・誰に何を買わされたの?」


「コンドーさん・・・」


「えっ?」


「こんどうさん?・・・こんどうさんに何買わされたって?」


「違うよ・・・コンドームだよ」


そう言って読めさんはテーブルの上の小包を指差した。

よくよく見ると、透明の包みに入った、大量のコンドームじゃん。


「およよ・・・これ何個入ってるんだ?」

「どうしたの?、こんなにたくさん・・・」


聞くと、こうだ。

昼過ぎ、おばちゃん、ふたり組がピンポ〜ンって訪ねてきて、


「は〜い」


って出た嫁さんを見て、おばちゃんは開口一番。


「奥さんよね、コンドーム買ってくれない?・・・」


「は??」


「コンドームなんだけどね・・・必要でしょ」

「見たところ、奥さん若そうだし・・・新婚さんよね」

「だったら使うわよね、コンドーム」


って言いながら、大きめのカバンから、包みを取り出したらしい。


「どうせ、使かうでしょ!!」

「お安くしとくからさ」


「うちは、そういうの旦那様が薬局で買ってくるんで、いらないです」


「薬局なんかより、ずっとお安いのよ・・・ね」

「買っておいたら、無くなったわ〜なんて慌てなくて済むわよ」


そう言うと、おばちゃんは、嫁さんにコンドームの包みを強引に渡したらしい。

おばちゃんの勢いに押されて嫁さんはコンドームを買っちゃったんだって。

決め手は、おばちゃんの


「どうせ使うでしょ」


って言葉だったらしい。


(そうよね・・・どうせ使っちゃうし・・・)


そう嫁さんは思ったんだな。

当時の嫁さんはウブだったから、おばちゃんに帰ってくださいって

言い返せなかったみたいね。

おばちゃんたちの ほうが一枚も二枚も上手だったみたいだよ。


で、テーブルの上にデ〜ンと置かれたコンドーム。


「その、おばちゃんにいくら払ったの?」


「2万・・・」


「に、2万?」


「2万も払ったの?」


「そうか・・・僕がいたらな〜そんなもの買わせなかったのに・・・」

「今更返すったって、飛び込みの訪問販売じゃ、居所もわからないし返却たって

無理だし・・・だいいちさ、これマガいもんじゃないのか?」


「分かんない・・・」


「しかたないから、ちょっと開けてみるか」


僕はコンドームを包んでいるナイロンを開けた。


「これ、なんかいかにも安物って感じじゃん」

「ラブホに置いてあるメタクソ安っぽいコンドームと変わんないよ?」

「僕が薬局で買ってくるコンドームとまるで違うけど・・・」


「あのさ、これだけの量、使い切るまでに毎日エッチしても、なかなか減らないよ」


「え〜〜〜〜毎日はちょっと・・・」


安物のコンドームに2万円も、おばちゃんたちに、みごとにくれてやったみたいだ。

買ってしまったものはしょうがない・・・・使うか・・・って思ったんだけど

だけど、結局そのコンドームは一個も使うことなく終わったんだ。


なんでかって言うとコンドームのサイズが僕には合わなかったんです。

しかも薬局で売ってるコンドームと違って、サイズ表記もしてないからね。


で、2万円ドブに捨てたようなもん。

嫁さんはメーカーも定かじゃない不良品つかまされたみたいだよ。


おばちゃんを追い返す勇気と強さを持とうよ・・・ってその時は思ったけど

後の祭り。

祭りの後の静けさに心震わす、新婚夫婦。


その時はね、そんなこともあったけど・・・。

でも嫁さんも学習するし、生活の日々の中で精神的に強くもなるよね。


たまになんとかの塔とかって、宗教の勧誘におネエさんが我が家に訪ねて来る

そうなんだけど・・・。


「奥さん、ご夫婦ご円満ですか?、なにか悩みごととかありませんか?」


って聞かれるらしいんだけど、嫁さんは


「幸せです・・・ダーリンも優しいし夫婦円満です、幸せすぎて、それが悩みごと

です」


ってはっきり言い切ると、おネエさんは


「普通は少しくらい悩みごとがある人、多いんですけど、そんなにはっきり

幸せですって言い切る奥さんも珍しいです・・・どうも失礼しました」


って、帰って行くんだって・・・。


いつの間にか逞しくなったよね、うちの嫁さん。


つづく。


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