可愛い幼馴染に俺はアレを握られておちおち安心して眠れません。

 ……俺はロフトベットの中で、めちゃくちゃ苦悩していた。


「拓也くんのしっぽさん、真奈美まなみのお手々の中でおりこうさんだね、ご褒美にぎゅっ、てしてあげる……」


 むぎゅう♡


 こっ!? このおろしたての最新羽根布団よりも柔らかい感触は!! フェザータッチとはまさにこのことだ……。タッチだけにお粗末!! とか大喜利を始めてどうするんだ俺は!! とにかくこれはヤバい!! ヤバすぎて思わず泣き出してしまいそうな勢いだ……。


「おふうっ、ま、真奈美!? そんなにぎゅってしたらお、俺!! しっぽの形状を保てなくなっちゃう、アレがっ、が!? アレシンドにナッチャウヨ!! もしも彼が日本に帰化していたらドーハの悲劇が防げたかも知れないからぁ!!」


 ……マズい、真奈美にマウントを取られるだけならまだしも、

 完全に握られちゃってる俺は血の涙を流さんばかりに苦悩していた。


 俺、赤星拓也あかぼしたくやはたから見れば、美人揃いで有名な名門、君更津南女子きみさらずみなみじょし、この辺りでは有名なお嬢様女子校だ。 近隣にある共学の有名進学校と同等なレベルで偏差値は高く、その上スポーツ振興しんこうにも力を入れている。


 何より可愛い女の子が多く在籍することで、この界隈の男子からは常に憧れの的なんだ。しかし男子禁制の校風も強く、普段から教員、父兄以外の男性は出入りすることは不可能だと聞いている。年間で唯一のチャンスである文化祭も在校する女子生徒からの招待状が無いと入場することは不可能なんだ……。


 その中でも飛び抜けた美少女の真奈美と布団の中でニアミスした上にアレをニギニギされているんだ。俺の好きなラブコメの特殊シチュエーションでも滅多にない美味しい状況で、まさにリア充爆発しろ!! と思われるかもしれないが決して誤解しないでほしい。


 俺には素直に喜べない理由わけがあるんだ、即身成仏になる修行僧の姿を頭に思い浮かべて貰いたい……。


 俺の可愛い幼馴染み、二宮真奈美にのみやまなみは可愛がっていた愛犬ショコラに先立たれてしまったんだ、彼女は幼い頃からの習慣でショコラの尻尾を握ってないと安心して眠ることが出来ない体質と聞いて俺は驚きを隠せなかった。

 愛する対象を失った真奈美は情緒不安定になり尻尾の幻影を求めて夜な夜な

 彷徨さまよい歩くうちにいつしか俺の部屋へとたどり着いたんだ。


 そんな真奈美を責めることは俺にはとても出来ない、昔からショコラと一緒に、

 俺の部屋に遊びに来ていたから彼女の記憶に強く刻み込まれていたんだろう。

 ショコラの尻尾のサイズ感と俺のアレが奇跡的(?)にそっくりだったことから、

 俺は彼女にショコラのしっぽの代わりになるって宣言したんだ……。


 だから俺は彼女の想いを汚すような真似を絶対にしちゃいけないんだ!!


「よし、待て!! ショコラのしっぽくん、じゃなかった。拓也くんのしっぽさんがとってもおりこうさんだから、真奈美がもっとナデナデしてあげるね」


 むにゅう♡ 


「……こほおっっっ!?」


 言葉に出来ないっ、へんな吐息が口かられてしまう。

 に、ニギニギだけでも激ヤバなのに、違う方向へわんこのお散歩運動なのぉ!?

 完全に俺は悶絶して白目を剥いてしまった……。

 少しだけ口の端から泡を吹いていたかもしれない。


「まっ、まな、真奈美ちゅわん!! その動きは駄目っ!! しっぽが、しっぽが形を保てなくなっちゃうよぉ……」


 可愛い小型犬で有名なトイプードルが獰猛な大型犬のドーベルマンに超進化しちゃうよ……。


 俺の脳内で往年のダークヒーロー、ドーべルマン◯事が44マグナム弾をぶっ放しそうな勢いだった。


「このド外道が~~~!!」と叫びながら目には血の涙を浮かべている。


「……ごめんなさい、どこか痛かった!? まだ拓也くんのしっぽの握り方に慣れてなくて」


 ううっ、痛いんじゃなくてその真逆なんだけどね……。


 俺と真奈美は並んだ状態でロフトのベッドに仰向けに寝ていた。

 とても向かい合わせてなんて俺が興奮して寝られないからな。


 真奈美が心配そうに俺の表情を伺っているのが常夜灯に照らされて確認出来る。

 その顔はやっぱりめちゃくちゃ可愛いが、俺のアレに起こっていることはとても言えない……。


 ショコラの大切な思い出をぶち壊しにすることは到底俺には出来ないから。


 疑問なのは真奈美がいくら箱入り娘のお嬢様だからと言っても程がある。

 いくら俺のサイズ感がショコラのしっぽと似ていてもアレをニギニギする意味が分からない年齢ではないだろう。


 子供の頃から真奈美はどこか浮世離れした女の子だったがそれだけでは今回の説明にならないだろう。


「真奈美、ひとつ聞いてもいいか?」


 恥ずかしがっても仕方がない、単刀直入に聞いてしまおう。


「お前は俺のだな、し、しっぽを握ることに抵抗はないの!? も、もしかして他のアレを握りなれてるとか……」


 な、何、余計なことまで聞いてんだ、俺は!?

 真奈美に限ってそんなことは絶対にないって信じてるのに。


「あっ、こ、これは幼馴染みの拓也くんだから大丈夫なんだよ、他の人だったら絶体に出来ないよ、こんなこと……」


 耳まで真っ赤になって布団のふちで顔を隠してしまう。


 うはあっ!! 超絶カワイイぜ、真奈美っ。

 俺は尻尾だけでなくショコラみたいにぴょんぴょんと飛び掛かって甘えたくなるが、もしもそんなことしたら完全に尻尾の形が保てなくなるので煩悩を鎮めるために最近起こった煩悩を押さえられそうなことを頭に思い浮かべた。


【う〜〜ん、最近起こった俺が一番肝を冷やした出来事はしかないな!!】


 その出来事を思い出すだけで俺のアレも人畜無害になってしまいそうなほどなのはもちろん言うまでもない……。


 

 新展開な次回に続く!!


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