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 「……えっ?」

 驚くアテナにシッ、っと口を閉じるよう合図を送る。エルフとしての能力なのか緊急回避の恩恵なのか、危険に対する察知能力も上がってる気がする。 

 緊急回避LV99が発動しました。10分以内に回避をお願いします。

 というアナウンスと共に、周りの動きが止まった。んあっ?どこだ?

 とりあえず止まったアテナを(関節等に負担がおきない様)ゆっくりと横たわらせ、周りを見渡す。

 ……側面と後方から、矢が飛んできていた。とりあえず矢を無力化した後、飛んできた方向を見ると……草に紛れて凶悪な顔の小さい人型モンスターが、こちらに弓を向けている。ゴブリンか。

 ちと人型モンスターを倒すのは抵抗があるが、エルフの知識以前にラノベ好きとしては生かしておいてもろくな事にはならないと知っている。俺がやられたらアテナを狙ってくるだろうしな。

 幸い小柄なゴブリン、弓の射程もそう遠くないらしく、俺のいた位置から弓の必中範囲に撃ってきた3匹がいた。全てヘッドショットしておき、他の個体がいないか注意深く見渡……って草原の中、いくつか注意を促す赤い点が光っていた。うーん、このゴブリンの集団を一つと考えて危険判定してるのかな?

 とりあえず逃して他の仲間を呼ばれるのもアレだ。10匹ほどいたが全て弓で倒しておく。ボス(ゴブリンエリート)には念入りに2,3発撃っておく。


 周りを確認し、赤い点が全て消えるのを確認した。確かにゴブリンみたいな魔物がいたら少なくとも一人旅は危ないよな。

 アテナの元に戻り、緊急回避を解除する。風景が動き出し……

 「!?なっ、何っっっ!!」

 あ、そりゃ気付いたらいきなり寝っ転がってたらちと驚くわな。急に寝転がす事で急加速して負担が……とかの心配もないようだ。

 周りからギャッという短い声がいくつも響き、沈黙する。無事全て倒したようだ。

 「ゴブリンだ。既に処理はしたがまだ終わったか判らない。しばらく伏せてろ」

 「ごっ、ゴブリ……こんな数の……全然気付かなかった……す、既に処理って……」

 アテナは倒れたゴブリンの数の多さを見てへたり込む。少し震えてる気がする。

 俺はゴブリンエリートのいた位置に向かい、既に絶命している奴を突き刺さった矢を使い触れないように持ち上げる。

 そこそこいい装備をしているな。レア装備だったりして。

 「そ、そのゴブリンは……」

 アテナが俺が持ち上げたゴブリンエリートを見て呆然とし、しばらくすると……

 「う……うえええええんっ!!」

 いきなり泣き出した……突然の事に俺が呆然となる……。

「あ、ありがとう……ありがとう……父さんの……母さんの敵……うえええええええええん!!!!!」

 ……なるほどな。図らずも俺はアテナの両親を殺したゴブリンを倒していたらしい。もしかして……。

 少し泣き止んだアテナの前に、ゴブリンがつけていた人間のものと思われる装備を置いたが……その中の腕輪らしきものを見て、また泣き出した……予想通り、両親の形見の品も混ざっていたらしい。


 ……泣きつかれたアテナの頭をゆっくりさすってやる。アテナは少し照れたように、俺に身をまかせて、ゆっくりと話し出す。

 2年前、今は小康状態なルナちゃんの病気が酷かった時、両親は周囲の反対を押し切って危険な時期に森の奥へと薬草を取りに行ったそうだ。

 無事に薬草を摘んだ帰り道、ゴブリンの集団に襲われ、父親は数匹のゴブリンを倒すも瀕死の重傷を負い、母親は連れ去られたらしい。

 何とか逃げ帰った父親はアテナの目の前で薬草を渡し、息絶えたらしい……このゴブリンエリートには剣士だった父親の付けたらしい特徴的な剣技の跡が残っていた。

 「……本当に、ありがとう……」

 両親の形見を手に、またアテナは呟いた。

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